ZDHCとは?|テキスタイル、レザー、アパレルおよびフットウェア産業向けの化学物質管理システム
掲載日:2026.09.11
テキスタイル、レザー、アパレルおよびフットウェア産業におけるブランド、化学品メーカー、サプライヤー、ソリューションプロバイダー等の様々なステークホルダーが導入しているZDHCプログラムについて解説します。
サプライチェーンの化学物質管理を推進したい担当者必見です。
※本コラムは、2026年9月11日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。
- ZDHCとは? 概要と設立の背景
- ZDHC MRSL(製造時制限物質リスト)の基礎知識
- ZDHC Gatewayと各ツールの役割
- ZDHC MRSL適合レベル(Level 1〜3)の解説
- ZDHCプログラム実装のメリット
- ZDHCプログラム実装の具体的手順
- まとめ
ZDHCプログラム対応をご検討中の企業様へ
SGSは、ZDHCプログラム対応をサポートしています。
近年、ファッション産業において、環境保護と持続可能なサプライチェーンの構築がかつてないほど重要視されています。その中で、グローバルスタンダードとして広く普及しているのがZDHCプログラムです。
ZDHCは、製品の製造工程において環境や人体に悪影響を及ぼす有害な化学物質の使用を制限し、最終的には排出をゼロにすることを目指す国際的な取り組みです。
多くの世界的ブランドがこのZDHCプログラムを採用しており、バリューチェーン全体で、厳格な化学物質管理を推進しています。
そのため、繊維製品や皮革製品の製造に関わる企業にとって、ZDHCの要件を正しく理解し、適切に対応することは、事業を継続し拡大していく上で不可欠な要素となっています。
本記事では、ZDHCの基本的な概念から、中核となるMRSL(Manufacturing Restricted Substances List、製造時制限物質リスト)の仕組み、MRSL適合レベルの詳細、そして企業が取り組むべき具体的な手順までを網羅的に解説します。
ZDHCプログラムの実装を開始する企業の担当者様にとって、実務に直結する有益な情報を提供します。
ZDHCとは? 概要と設立の背景
ZDHCが設立された背景と歴史
2011年に、環境NGOグリーンピースはデトックスキャンペーンを展開しました。
このキャンペーンは、ファッション製品の生産工場でサンプリングした排水や、大手ブランドの店舗で試買した商品に有害な化学物質が含まれていないかの試験を行い、その結果を世間に公表するというものでした。
同時に、それらのブランドに対して有害な化学物質の使用や排出を2020年までにゼロにすることを要求しました。
このキャンペーンは世界的な反響を呼び、消費者からもブランドの環境責任を問う声が急速に高まりました。
このような社会的な圧力と環境問題への危機感を受け、グリーンピースの要求にコミットした複数のブランドによって、ファッション業界全体で統一された基準と行動計画を策定するため、2012年にZDHCの前身が設立されました。
その後、2015年にZDHCは独立した財団として組織化され、現在ではブランドだけでなく、化学品メーカーや繊維メーカー、皮革メーカー、ソリューションプロバイダーなど、サプライチェーンに関わるあらゆるステークホルダーが参加する巨大なグローバルプラットフォームへと成長を遂げました。
ZDHCのガイドラインは継続的にアップデートされており、最新の科学的知見に基づいた厳格な化学物質管理の枠組みを世界中に提供し続けています。
参考:ZDHC
ZDHCプログラムの目的
ZDHCプログラムの最大の目的は、ファッション産業のバリューチェーン全体から、環境や人体に有害な化学物質を完全に排除することです。
従来、ファッション製品の製造プロセス、特に染色や加工の段階では、多種多様な化学物質と大量の水が消費されてきました。
これらの化学物質の中には、自然環境で分解されにくく生態系に蓄積しやすいものや、発がん性など人体への深刻な健康被害をもたらす可能性が指摘されているものが含まれています。
国連環境計画などの公的機関も、工業排水による水質汚染の深刻さを繰り返し警告しており、産業界全体での早急な対応が求められてきました。
ZDHCは、最終製品に有害物質が残留していないかを確認するのではなく、工場での製造工程そのものに焦点を当てている点が大きな特徴です。
製造時に使用する化学品の段階から有害物質を制限することで、工場からの排水や排気を通じた環境汚染を根本から防ぐことを目指しています。
これにより、工場で働く労働者の安全と健康を保護するとともに、消費者の安全や地球の生態系を保護するための持続可能なファッション製品の生産基盤を構築するという、重要な役割を担っています。
ZDHC MRSL(製造時制限物質リスト)の基礎知識
MRSLとPRSL(またはRSL)の違い
| ZDHC MRSL (Manufacturing RSL、製造時制限物質リスト) |
PRSL (Product RSL、製品制限物質リスト) |
|
| 対象 | 製造工程で使用される化学品 | 糸、生地、副資材等の素材や最終製品 |
| 目的 | 労働者の保護と環境汚染の防止 | 法令順守および消費者の健康と安全の確保 |
| 適用段階 | インプット管理(化学品の製造およびサプライヤーによる化学品購買) | アウトプット管理(素材調達時や、最終製品の出荷前検査) |
化学物質管理を理解する上で、ZDHC MRSLと一般的なPRSLの違いを正確に理解することは極めて重要です。
PRSLは製品制限物質リストを意味し、消費者が直接触れる完成品のアパレル品や靴などに残留すべきでない化学物質とその濃度を規定するものです。
これは販売国の法令順守と消費者の安全を守るための最終防衛線として機能します。
一方、ZDHC MRSLは製造時制限物質リストと呼ばれ、製品を製造する過程で使用される染料や助剤などの化学品そのものに含まれる有害物質の意図的な使用を禁止するものです。
つまり、PRSLが川下の最終製品を対象とするのに対し、MRSLは川上の製造工程を対象としています。
製造工程で有害物質を使用しなければ、最終製品に有害物質が残留するリスクは低くなり、同時に工場からの有害な排水も未然に防ぐことができます。
ZDHC MRSLは、問題が起きてから対処するのではなく、問題の発生源を根本から絶つというより積極的な化学物質管理のアプローチを採用しており、これが持続可能なサプライチェーン管理において高く評価されている理由です。
ZDHC MRSLの対象となる産業と物質
ZDHC MRSLは、テキスタイル、レザー、アパレルおよびフットウェア産業における製造工程を対象として設計されています。
具体的には、糸の紡績や生地の織造、染色、プリント加工、皮革のなめし加工など、化学品を使用するあらゆる工程が対象範囲に含まれます。
MRSLで制限される物質群は多岐にわたり、アルキルフェノール類やフタル酸エステル類、アゾ染料から生成される特定の芳香族アミン、重金属類、有機スズ化合物、PFASなど、環境残留性や生体蓄積性、毒性が懸念されている化学物質がリストアップされています。
これらの物質は、従来の生産加工において発色を良くしたり、撥水性などの機能性を付与したりするために頻繁に使用されてきたものですが、ZDHC MRSLではこれらをより安全な代替物質へ切り替えることを推奨しています。
ZDHCは継続的にMRSLのバージョンを更新しており、最新の化学的知見や国際的な法規制の動向を反映させながら、制限対象となる化学物質やその許容限界値を見直しています。
生産施設では常に、最新のMRSLバージョンを確認し、自社で使用している化学品がMRSLに適合しているかをチェックする体制を構築することが求められています。
ZDHC Gatewayと各ツールの役割
ZDHC Gatewayとは
| ツール名 | 主な機能と役割 |
| ZDHC Gateway | ZDHC MRSL適合製品を登録・検索するためのグローバルなデータベース |
| Performance InCheck レポート | 生産施設が使用する化学品インベントリのZDHC MRSLへの適合状況を評価するレポート |
| ClearStreamレポート | 工場の排水試験結果のZDHC排水ガイドラインへの適合状況を評価するレポート |
| ChemCheckレポート | 化学品メーカーが自社製品のZDHC MRSL適合レベルを示すためのレポート |
ZDHC Gatewayは、ZDHCプログラムの中核をなす世界最大級のオンラインデータベースプラットフォームです。
このシステムは、化学品メーカー、生産施設、そしてブランドといったサプライチェーンに関わるすべてのステークホルダーをZDHC Gateway上でリンクさせることによって、透明性の高い情報共有を可能にしています。
化学品メーカーは、自社が製造する染料や助剤がZDHC MRSLの要件を満たしていることを証明するデータとともに化学品をGatewayに登録します。
一方、繊維工場や皮革工場などの生産施設は、このGatewayを検索エンジンとして利用することで、世界中のより安全な化学品を容易に見つけ出し、調達の意思決定に活用することができます。
さらに、ブランド側は自社のサプライヤーがどのような化学品を使用しているのか、またZDHCの各種ガイドラインにどの程度準拠しているのかをリアルタイムで追跡し、モニタリングすることができます。
ZDHC Gatewayの導入により、これまで不透明だったサプライチェーン内の化学物質管理情報のトレーサビリティが飛躍的に向上します。
ZDHC Gatewayのアカウントを取得することは、企業がZDHCプログラムを実装する上での第一歩となっています。
参考:ZDHC Gateway
Performance InCheckレポートの活用
Performance InCheckレポートは、生産施設が日常的に使用している様々な化学品が、ZDHC MRSLの要件にどの程度適合しているかを評価し、可視化するためのツールです。
工場は、自社で保有しているすべての化学品インベントリデータを、ZDHCが認定したサードパーティのソフトウェアプロバイダーを通じてシステムにアップロードします。
アップロードされたデータとZDHC Gatewayに登録されているデータベースは自動的に照合され、生産施設が使用している化学品のZDHC MRSL適合率をパーセンテージで算出してレポートとして出力します。
このPerformance InCheckレポートを活用することで、生産施設の管理者は自社の化学物質管理における現状の課題や改善すべき点を一目で把握することができます。
また、ブランド側から要請があった際に、自社工場の持続可能性への取り組み状況を証明するエビデンスとして提出することができます。
毎月Performance InCheckレポートを生成し、適合率を段階的に向上させていくプロセスは、ZDHCの継続的改善のサイクルを回す上での効果的な手段として広く採用されています。
参考:Incheck - Gateway Reports
※本サイトにInCheckレポートと後述のClear Streamレポートの紹介があります。
ClearStreamレポートの活用
生産におけるインプットを管理するPerformance InCheckレポートに対し、アウトプットの管理を担うのがClearStreamレポートです。
ZDHCは化学物質のインプットだけでなく、工場から排出される排水の品質についてもガイドラインを定めています。
生産施設は、ZDHCが認定した第三者試験機関に依頼して、自工場の排水やスラッジのサンプリングと分析試験を年に2回実施することが推奨されています。
その試験結果はZDHC Gatewayにアップロードされ、ZDHC排水ガイドラインの基準値と比較評価された上でClearStreamレポートとして生成されます。
このレポートは、生産施設のインプット管理と排水処理システムが適切に機能しており、有害な化学物質が環境中に放出されていないことをデータに基づいて証明するものです。
ClearStreamレポートは、ブランドに対し自社工場の持続可能性への取り組み状況を証明するエビデンスとなるだけでなく、工場が立地する地域社会や行政機関に対する環境コンプライアンスの証明としても有効です。
生産施設は、Performance InCheckとClearStreamの2つのツールを適切に運用することにより、包括的な化学物質管理体制を構築し、持続可能な生産基盤の構築を進めることができます。
参考:Incheck - Gateway Reports
※本サイトに前述のInCheckレポートとClear Streamレポートの紹介があります。
ZDHC MRSL適合レベル(Level 1〜3)の解説
ZDHC ChemCheckでは、化学品のZDHC MRSL適合状況をLevel 1、Level 2、Level 3の3段階で評価します。
レベルが高くなるほど、化学品そのものの適合性確認だけでなく、マネジメントシステムや化学品の危険有害性評価といったより厳格な現地監査が行われます。
特に、Level 3は、第三者機関による工場監査を含む最も信頼性の高い評価レベルであり、化学品管理体制が高度に整備されていることを示します。
| 適合レベル | 評価内容と要件の概要 | 主な取得方法 |
| Level 1 | 化学品の成分がZDHC MRSLの要件に準拠していることを確認 | 第三者機関による化学品の分析試験およびSDS(安全データシート)レビュー |
| Level 2 | Level 1の要件に加え、化学品メーカーのマネジメントシステムを確認 | 第三者機関による現地監査 |
| Level 3 | Level 2の要件に加え、化学品の危険有害性評価能力を確認 | 第三者機関による現地監査 |
Level 1の要件と取得方法
ZDHC MRSLへの適合性を証明する最初のステップとなるのがLevel 1です。
Level 1の基本的な要件は、対象となる化学品の成分がZDHC MRSLの対象物質の制限値を超えていないことを確認することです。
取得方法としては、第三者機関による、化学品メーカーが提供するSDS(安全データシート)の精査および化学品の成分分析試験が主となります。
ZDHCが認定した第三者機関にサンプルの分析を依頼し、MRSLで指定された制限物質が含まれていない、あるいは許容限度内であることが証明されれば、Level 1認証を受けることができます。
Level 1は主に化学品そのものの化学的特性に焦点を当てた評価であり、化学品メーカーにとってはZDHC Gatewayに自社製品を登録するための最低限の条件となります。
生産施設は、調達する化学品が少なくともこのLevel 1を満たしていることを確認することで、自社の製造プロセスに有害物質が混入するリスクを低減させることができます。
比較的短期間で取得可能なレベルであるため、ZDHC MRSL対応の第一歩として位置づけられています。
Level 2の要件と取得方法
Level 2は、Level 1の化学品に対する評価に加えて、化学品メーカーの組織的な管理体制を評価する一歩進んだ適合レベルです。
化学製品というものは製造ロットによって品質にばらつきが生じる可能性があるため、単一のサンプルの試験結果だけでは継続的な安全性を担保することはできません。
そこで、Level 2では、化学品メーカーがZDHC MRSLに適合した製品を安定して製造し続けるための適切なマネジメントシステムを構築・運用しているかが現地監査されます。
取得に向けた具体的なアプローチとしては、ZDHC認定の第三者機関が化学品メーカーの各種手順書や品質管理記録、原材料の調達基準などの文書を詳細にレビューします。
この審査を通じて、企業が化学物質管理に関する明確な方針を持ち、それを現場の運用レベルまで落とし込めていることが確認されれば、Level 2認証が付与されます。
Level 2を取得した化学品は、一過性の試験合格ではなく、製造プロセスの管理に基づいた高い信頼性を持つと評価されるため、ブランドや生産施設からの調達優先度が向上します。
Level 3の要件と取得方法
ZDHC MRSLにおける最高位の適合レベルがLevel 3であり、最も厳格で信頼性の高い証明となります。
Level 3を取得するためには、Level 1の製品分析とLevel 2のマネジメントシステムの審査をクリアした上で、ZDHCが認定した監査員が実際に化学品メーカーの製造現場に赴き、化学物質ハザード評価(CHA)能力を審査します。
これはGHSに基づく化学品の分類・表示や、危険有害性、環境影響データの評価を行う能力であり、Level 3では主要国の化学物質規制対応や化学品の危険有害性評価、SDS作成、代替物質の選定、データ管理までを含む総合的な化学物質管理能力が求められます。
Level 3認証を受けた化学品は、ZDHC MRSLの要件を満たす最高レベルの製品として認知されています。
化学品メーカーにとってLevel 3の取得は多大な時間とコストを要しますが、グローバル市場における競争優位性を確立し、サステナビリティリーダーとしての地位を確固たるものにするための武器となります。
ZDHCプログラム実装のメリット
ZDHCの取り組みは、単なる化学物質管理や環境対応にとどまらず、企業経営にさまざまなメリットをもたらします。
営業面ではグローバルブランドとの取引機会の拡大につながり、リスク管理面では将来の法規制強化への備えとなります。
また、環境配慮企業としてのブランド価値向上や、化学物質管理業務の効率化による生産性向上など、企業の競争力強化にも貢献します。
グローバルブランドとの取引拡大
企業がZDHCの要件に対応することで得られる最も直接的なメリットは、グローバルブランドとの取引機会の拡大です。
現在、アパレルやフットウェア業界を牽引する主要な世界的ブランドの多くは、ZDHCのシグナトリーとして名を連ねており、自社のサプライチェーン全体に対してZDHC MRSLの遵守を必須の取引条件として課すようになっています。
つまり、ZDHCプログラムに対応していない工場や化学品メーカーは、これらの巨大な市場から事実上締め出されてしまうリスクに直面しています。
逆に言えば、ZDHC Gatewayに登録し、Performance InCheckレポートやClearStreamレポートを通じて適合率と透明性を示すことのできる企業は、ブランド側から優良なサプライヤーとして評価されます。
環境対応が遅れている競合他社との明確な差別化要因となり、既存の取引先との関係強化はもちろんのこと、新たなグローバルブランドからの新規受注を獲得するためのアピールポイントとなります。
ZDHCへの対応は、単なる環境保全活動の枠を超え、企業の生き残りと成長を左右する経営戦略として位置づけられています。
サステナビリティ推進による企業価値向上
ZDHCプログラムの取り組みは、企業のサステナビリティを推進し、中長期的な企業価値を向上させる効果をもたらします。
近年、ESG投資の拡大に伴い、投資家や金融機関は企業の環境への配慮や社会的責任を投資判断の重要な指標としています。
ZDHCプログラムに準拠した化学物質管理体制を構築し、有害物質の排出ゼロに向けた具体的な成果を上げることは、企業のESG評価を飛躍的に高めることに直結します。
また、消費者意識の変化も見逃せません。
現代の消費者は、製品の品質や価格だけでなく、その製品がどのような環境下で、どのように作られたかという背景のストーリーを重視するようになっています。
ZDHCプログラムに準拠し環境に配慮した製造工程を維持管理していることを透明性をもって発信することによって、消費者からの強い信頼と共感を獲得し、ブランドロイヤリティの向上に繋げることができます。
さらに、安全な労働環境を提供することは、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保にも寄与し、組織全体の持続的な成長を支える基盤となります。
ZDHCプログラム実装の具体的手順
ZDHCプログラムの実装は、まず生産施設で使用している化学品の現状を把握することから始まります。
次に、認定機関による成分分析や排水試験を実施して適合性を確認し、その結果をZDHC Gatewayへ登録します。
その後は、各種レポートを活用しながら継続的に化学物質管理の改善を行うことで、環境負荷の低減とサプライチェーン全体の透明性向上を実現できます。
| ステップ | 手順 | 実施すべき具体的なアクション |
| ステップ1 | 化学品インベントリ把握 | 生産施設内で使用しているすべての化学品をリスト化し、安全データシート(SDS)を収集・整理する。 |
| ステップ2 | 適合性評価と試験 | 化学品のZDHC MRSL認証レベルの確認や排水試験を実施し、ZDHC MRSLやZDHC排水ガイドラインへの適合状況を確認する。 |
| ステップ3 | ZDHC Gatewayの活用 | ZDHC Gatewayのアカウントを取得し、データをアップロードするとともに、Performance InCheckやClearStreamなどのレポートを定期的に生成・管理する。 |
化学品インベントリの把握
ZDHCプログラムの実装を開始するにあたり、企業が取り組むべき最初のステップは、自社で取り扱っている化学品の現状を正確に把握することです。
生産施設であれば、すべての製造工程で使用されている染料、顔料、助剤、洗浄剤など、あらゆる化学品を網羅的にリストアップし、詳細な化学物質インベントリを作成する必要があります。
この作業では、単に品名を羅列するだけでなく、各化学品のサプライヤー情報や月間の使用量、保管状況などを正確に記録することが求められます。
同時に、化学品メーカーから最新のSDS(安全データシート)を取り寄せ、製品に含まれる成分情報を詳細に確認する作業も不可欠です。
この初期段階でのインベントリの精度が、その後のZDHC MRSLへの適合性評価の正確さを大きく左右します。
多くの生産施設では、これまで紙ベースや属人的なエクセル管理で行われていたインベントリ管理を、専用のデジタル管理システムへ移行させることで、情報の透明性と検索性を高め、効率的な管理体制を構築することができます。
現状を正確に把握することが、すべての改善活動の出発点となります。
適合性評価と試験
化学品インベントリが整備された後、次に行うべきステップは、専門の第三者機関を活用した評価と試験の実施です。
自社の自己宣言だけではグローバルブランドに対する証明力としては不十分であるため、ZDHCが認定した第三者機関のサポートを受けることが推奨されます。
化学品メーカーであれば、自社製品がZDHC MRSLのLevel 1、2、 3のどの要件を満たしているかを証明するために、認定機関に成分分析や現地監査を依頼します。
一方、生産施設の場合は、自社の化学品インベントリのうちどの化学品がZDHC MRSLに準拠しているのかを確認します。
また、ZDHC排水ガイドラインに準拠していることを示すために、認定機関による工場排水およびスラッジの分析試験を実施します。
これらの第三者機関は、ZDHC要件や国際的な試験規格に精通しており、正確な分析データを提供するだけでなく、不適合が見つかった場合の改善に向けた技術的なアドバイスを提供していることもあります。
信頼できるパートナー機関を選定し、化学物質管理の継続的改善を確実に進めることが成功の鍵となります。
ZDHC Gatewayの活用
試験や監査を経て適合性が確認された後は、その結果をサプライチェーン全体に共有するためのプラットフォームであるZDHC Gatewayの活用フェーズへと移行します。
企業はまずZDHC Gatewayのアカウントを取得し、自社の基本プロファイルを登録します。
化学品メーカーは、第三者機関から取得したZDHC MRSL認証データとともに自社の化学品をデータベースに登録し、世界中の生産施設に向けて公開します。
生産施設は、自社の化学品インベントリデータをシステムにアップロードし、Performance InCheckレポートを毎月生成して、ZDHC MRSL適合率の推移をモニタリングします。
また、排水試験の結果もGatewayにアップロードし、ClearStreamレポートとしてブランドに共有します。
重要なのは、ZDHC Gatewayへの登録を一度きりの作業で終わらせるのではなく、継続的に活用することです。
新規の化学品を導入する際には、必ず事前にZDHC GatewayでZDHC MRSL適合品を検索し、毎月のレポート生成を通じて改善の進捗を確認し続けるという日々の管理業務に組み込むことで、有害化学物質排出ゼロの実現に近づくことができます。
まとめ
この記事では、ZDHCの基本的な概念からMRSLの仕組み、適合レベル、そして具体的な対応手順に至るまでの重要ポイントを解説しました。
- ZDHCは、ファッション産業における有害化学物質の排出ゼロを目指す国際的なプログラムである。
- ZDHC MRSLは、最終製品ではなく、製造工程で意図的に使用すべきでない化学物質のリストである。
- ZDHC Gatewayを活用することで、サプライチェーンの化学物質管理の透明性が向上する。
- ZDHC MRSL適合レベルは、Level 1から3まであり、高いレベルほど厳格な監査と信頼性が求められる。
- ZDHCプログラムの実装は、グローバルブランドとの取引拡大や企業価値向上に直結する経営課題である。
ZDHCプログラムの要件を正しく理解し、自社の現状に合わせた適切なステップを踏むことで、持続可能なビジネスの構築と業界全体の環境負荷低減に貢献することができます。
ZDHCプログラム対応をご検討中の企業様へ
SGSは、ZDHCプログラム対応をサポートしています。
監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート
