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PPWRとは?|2026年適用のEU新包装規則と企業の対応策を解説

PPWR(包装・包装廃棄物規則)とは、EUの新しい包装規制です。
2025年2月に発効し、2026年8月から段階的に適用されます。
本記事では、リサイクル義務や禁止事項など主要な要件とスケジュール、企業がとるべき対応策をわかりやすく解説します。

欧州市場に向けて製品を輸出・販売している企業の皆様、PPWR(包装及び包装廃棄物規則)への対応準備は進んでいますか?

「従来の規制と何が違うのか?」「具体的にいつまでに、何をすればいいのか?」「対応しないとどのようなリスクがあるのか?」
もしこのような疑問をお持ちであれば、この記事がその解決をサポートします。


PPWR(Regulation (EU) 2025/40)は、EU市場における包装廃棄物を削減し、循環経済を強力に推進するための新しい法律です。2025年2月に正式に発効し、2026年8月から順次、具体的な義務が適用されます。この規制は、単なる「努力目標」ではなく、EU加盟国全体に直接適用される「法的義務」です。

この記事では、PPWRの概要から、企業が直面する具体的な義務、そして2026年の適用開始に向けたスケジュールと対応策をわかりやすく解説します。読み終える頃には、自社が今すぐ取り組むべきアクションが明確になり、自信を持ってプロジェクトを進められるようになるでしょう。

PPWR(包装・包装廃棄物規則)とは何か?

PPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation)は、EUにおける包装と包装廃棄物に関する包括的な規制です。
これまでの「指令(Directive)」から、より拘束力の強い「規則(Regulation)」へと格上げされたことで、EU全域で統一された厳しいルールが適用されることになりました。
ここでは、その背景と目的を紐解きます。


参考:Packaging waste - Environment - European Commission

EU市場の包装廃棄物問題を解決する新規則

PPWRが制定された最大の理由は、増え続ける包装廃棄物への危機感です。
EUでは、オンラインショッピングの普及やテイクアウト需要の増加に伴い、包装廃棄物の量が過去最高レベルに達しています。
従来の規制ではこの増加傾向を食い止めることができず、抜本的な対策が必要とされていました。
PPWRは、包装の過剰使用を抑制し、廃棄物の発生そのものを減らすことを最優先事項としています。
具体的には、2040年までに一人当たりの包装廃棄物を2018年比で15%削減するという野心的な目標が掲げられています。


参考:在欧州連合日本国大使館「EUのPPWR(包装・包装廃棄物規則)の概要(PDF)」

 

循環経済の促進と環境負荷の低減が目的

この規制の核心は「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の実現です。
にゴミを減らすだけでなく、使われた包装材が再び資源として循環する仕組みを作ることが求められます。
これまでは「リサイクル可能っぽい」包装であれば許容されていたケースもありましたが、今後は「実際にリサイクルできる」設計と、再生材(リサイクル材)の使用が義務化されます。
これにより、バージン材(新品の素材)の使用を減らし、CO2排出量の削減や天然資源の保護につなげる狙いがあります。

指令から規則への変更で法的拘束力が強化

PPWRの重要なポイントは、法的な形式が「指令(Directive)」から「規則(Regulation)」に変わったことです。
「指令」の場合、EUが定めた目標を達成するために、各加盟国がそれぞれの国内法を整備する必要があり、国によってルールのバラつきが生じやすいという課題がありました。一方、「規則」はEU加盟国すべてに直接かつ一律に適用されます。
つまり、ドイツでもフランスでもイタリアでも、企業は同じ基準・同じ定義のルールを守らなければなりません。
これにより、EU単一市場としての公平な競争環境が整う一方で、企業にとっては逃げ場のない厳格な対応が求められることになります。

PPWRはいつから誰に影響があるのか?

「うちは関係ないだろう」と思っていませんか?
PPWRの適用範囲は非常に広く、EU市場に関わるほぼすべての企業が当事者となります。
ここでは、対象となる企業の範囲と、差し迫ったタイムラインについて解説します。

項目 内容
対象地域 EU全加盟国
対象企業

製造業者
輸入業者
流通業者
小売業者などEU市場に放送を供給する全事業者

対象包装 家庭用、業務用、輸送用を含むあらゆる包装材(紙、プラ、ガラス、金属など)
発効日 2025年2月11日(正式発効済み)
主な適用開始 2026年8月12日(発効から18カ月後)

 

EU市場で包装材を扱う全事業者が対象

PPWRは、EU域内に拠点を置く企業だけでなく、EU域外から製品を輸出する日本企業にも適用されます。
対象となるのは、製品のメーカーだけではありません。包装材の製造業者、輸入業者、流通業者、さらにはECサイトを通じて消費者に直接販売する事業者も含まれます。
また、食品や飲料の容器だけでなく、電化製品の段ボール箱、輸送用のパレットやラップ、業務用のドラム缶など、ありとあらゆる「包装」が規制の対象です。
「BtoBだから関係ない」「包装材メーカーではないから大丈夫」という考えは通用しません。
自社がEU市場に何らかの形で関わっているなら、この規制は自分ごとして捉える必要があります。

2026年8月から主要な義務が適用開始

スケジュールへの認識を誤ると、ビジネスが止まる可能性があります。

PPWR自体は2025年2月にすでに発効しています。そして、多くの企業にとって最初の大きな山場となるのが、発効から18ヶ月後の2026年8月12日です。この日から、特定の有害物質の制限や、一部の義務が適用開始となります。
その後も2030年、2035年と段階的に要件が厳格化されていきますが、「2030年まで何もしなくていい」わけではありません。
特に製品の設計変更やサプライチェーンの調整には時間がかかるため、2026年の適用開始に向けた準備は、まさに「今」行う必要があります。


参考:在EU日本国大使館「EUのPPWR(包装・包装廃棄物規則)の概要」

違反した場合は高額な罰金のリスクがある

規制を守らなかった場合の代償は小さくありません。
違反した場合、各加盟国の規定に基づき、効果的かつ比例的で、抑止力のある罰則が科されます。
具体的には、違反製品のEU市場への出荷停止や回収命令、そして高額な罰金(制裁金)が課される可能性があります。
さらに、コンプライアンス違反による企業イメージの低下や、取引先からの契約解除といったビジネス上のダメージも計り知れません。
EU市場でのビジネスを継続するためには、コンプライアンス遵守が「参加資格」となるのです。

企業に求められる主な義務とは?

「サステナビリティ開示テーマ別基準第2号(気候基準)」は、ISSBのS2基準に相当し、気候変動に関する詳細な開示ルールを定めています。具体的には、気候変動が経営に与えるリスクと機会の分析、シナリオ分析の結果、そして温室効果ガス排出量(Scope1, 2, 3)の開示が求められます。特にScope3(サプライチェーン全体の排出量)の開示は実務的な負荷が大きいため、多くの企業にとって最大のハードルとなる部分です。

参考:「SSBJ基準の概要(サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG 第1回事務局資料)」 

では、具体的にどのような包装が求められるのでしょうか。
PPWRには多岐にわたる要件がありますが、ここでは特に影響が大きい5つの主要な義務について詳述します。これらは製品設計の根幹に関わる部分です。

すべての包装は2030年までにリサイクル可能に

これがPPWRの最も象徴的な義務の一つです。
2030年1月1日以降、EU市場に出されるすべての包装は「リサイクル可能(Recyclable)」でなければなりません。
ここで言う「リサイクル可能」とは、単に理論上リサイクルできるということではなく、実際に回収・選別・リサイクルするためのインフラが存在し、商業規模でリサイクルが回ることを意味します。
包装はリサイクル性能に応じてグレードAからCに評価され、基準を満たさない(グレードD以下など)包装は市場から排除されます。
複合素材(マルチマテリアル)など、分離が難しい包装設計は見直しを迫られるでしょう。

プラスチック包装には再生材の利用が必須

プラスチック包装に関しては、「作る側」の責任として再生材(リサイクル材)の使用が義務付けられます。
具体的には、2030年1月1日以降、プラスチック包装の種類に応じて一定割合以上の消費者使用後リサイクル材(PCR材)を含める必要があります。
たとえば、PETボトルなどの接触感応性(食品接触など)のある包装では30%、その他のプラスチック包装では35%といった最低含有率が設定されています。この目標値は2040年にはさらに引き上げられます。バージンのみで作られたプラスチック包装は今後、事実上使用できなくなるため、高品質なリサイクル材の確保が急務となります。

参考: 在欧州連合日本国大使館「EUのPPWR(包装・包装廃棄物規則)の概要(PDF)」

包装の重量と容積を最小限に抑える義務

「中身に対して箱が大きすぎる」過剰包装は、明確に規制されます。
企業は、包装の機能(保護など)を維持できる範囲で、重量と容積を最小限に抑えなければなりません。
特筆すべきは「空隙率(Empty space ratio)」の制限です。
輸送用包装や集合包装において、中身が入っていない「空きスペース」を最大50%以下に抑えることが求められます。つまり、小さな商品に対して大きな段ボールを使い、緩衝材で隙間を埋めるような梱包方法は認められなくなります。これは物流コストの削減にもつながりますが、梱包ラインの設計変更が必要になる場合もあるでしょう。

特定の使い捨てプラスチック包装は禁止される

一部の包装形式は、使用そのものが禁止されます。
2030年1月1日から、特定の用途における使い捨てプラスチック包装の販売が禁止される予定です。
対象となる例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 新鮮な果物や野菜を包む使い捨てプラスチック包装(1.5kg未満)
  • カフェやレストラン内で使用される飲食物の使い捨て容器
  • ホテルで使用されるアメニティ(シャンプーやローションなど)の小型容器
  • 空港などでスーツケースを包むシュリンク包装

これらの製品を扱っている、あるいは備品として使用している企業は、紙製などの代替素材への切り替えや、リユース可能な運用への変更が必要です。

新しい統一ラベル表示が義務付けられる

消費者や廃棄物処理業者が正しく分別できるよう、表示ルールも統一されます。
包装の材質を示すラベルを、EU全体で調和された規格に従って表示することが義務付けられます。
また、再利用可能な包装には、それが再利用可能であることを示すQRコードなどのデータキャリアの表示も求められます。
これまでは国ごとに異なるリサイクルマーク(例:フランスのトリマンマーク、イタリアの識別表示など)への対応に苦慮していた企業も多いでしょうが、今後はEU共通のルールへの適応が必要になります。
ラベルのデザイン変更や版の作り直しはリードタイムがかかるため、早めの準備が推奨されます。

具体的にどのような準備を進めるべきか?

規制の内容は多岐にわたるため、何から手をつければよいか迷うかもしれません。
しかし、闇雲に動くのではなく、ステップを踏んで着実に準備を進めることが重要です。
ここでは、推奨される4つのアクションを紹介します。

まず自社の包装材の現状を正確に把握する

最初のステップは、現状の「棚卸し」です。
自社がEU向けに出荷している全製品について、どのような包装材が使われているかをリストアップしましょう。

  • 一次包装(個装)、二次包装(外箱)、三次包装(輸送用パレットなど)のすべてが対象です。
  • それぞれの材質、重量、サイズ、リサイクル材の含有率、空隙率はどうなっているか。
  • どのサプライヤーから調達しているか。

これらのデータを正確に把握していなければ、どの包装が規制に抵触するのか、どこを改善すべきか判断できません。
まずは詳細なデータベースを作成することから始めましょう。

サプライヤーと連携し規制対応を協議する

包装の仕様変更は、自社だけで完結するものではありません。
包装材メーカーや現地の販売パートナーと密に連携する必要があります。
サプライヤーに対して、PPWRへの適合状況や、今後の対応計画(リサイクル材の供給能力や証明書の発行など)を確認しましょう。
また、輸入業者(インポーター)は現地での責任主体となる場合が多いため、彼らと役割分担やコスト負担について協議しておくことも不可欠です。
サプライチェーン全体で情報を共有し、協力体制を築くことが成功の鍵です。

包装設計の見直しと代替素材を検討する

現状分析でギャップが見つかったら、具体的な設計変更に着手します。

リサイクル不可能な複合素材を単一素材(モノマテリアル)に変更したり、再生プラスチックの使用量を増やしたりする検討が必要です。
また、空隙率規制に対応するために、製品サイズに合わせた段ボールのサイズバリエーションを増やす、あるいは製品自体の設計を見直してコンパクトにするなどの工夫も求められます。
設計変更には、強度テストや品質評価に時間がかかるため、2030年の期限を待たずに、可能なものから順次切り替えていくのが賢明です。

最新の規制動向を継続的に収集する

PPWRは大きな枠組みが決まったものの、細かな技術的基準(委任法や実施法)は今後順次制定されていきます。

たとえば、「リサイクル可能」の具体的な評価方法や、リサイクル材含有率の計算ルールなどの詳細は、これから数年の間に明確化されます。
古い情報のまま動いてしまうと、後で手戻りが発生するリスクがあります。
欧州委員会の発表や、業界団体からのニュースレター、専門コンサルタントのレポートなどを活用し、常に最新の情報をキャッチアップできる体制を整えておきましょう。

PPWR対応で考慮すべき注意点

最後に、見落としがちですが非常に重要な注意点をいくつか補足します。
これらを知らずに進めると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

各加盟国の国内法との関連性を確認する

PPWRはEU全体で統一された「規則」ですが、一部の運用は加盟国に委ねられている部分もあります。

また、PPWRが完全に適用されるまでの移行期間中は、各国の既存ルール(フランスのAGEC法など)が並行して適用される場合があります。特にEPR(拡大生産者責任)の登録や費用の支払いは国ごとに異なる機関が管轄しているため、輸出国それぞれの要件を満たしているか確認が必要です。
「EUルール守ったから全国OK」と安易に判断せず、主要な輸出国のローカルルールも併せてチェックしてください。

有害な化学物質(PFAS)の使用が禁止される

環境への配慮は、ゴミの量だけでなく質にも求められます。

PPWRでは、食品接触包装におけるPFAS(有機フッ素化合物)の使用が厳しく制限されます。
PFASは耐水・耐油性を持たせるために紙容器などで使われることがありますが、環境残留性が高いため世界的に規制が強化されています。もし自社の包装(特に食品用)にPFASが含まれている、あるいは意図せず混入している可能性がある場合は、直ちに代替品への切り替えを進める必要があります。これは2026年以降の比較的早い段階で影響が出る可能性があります。


参考:包装および包装廃棄物規制 - 欧州委員会

表示義務に関する詳細な要件を理解する

ラベル表示は、単にマークを貼ればよいというものではありません。

ラベルの材質、サイズ、貼付位置、そしてQRコードに含まれるべき情報の仕様など、細かい技術要件が定められます。
また、分別方法の表示は、各国の廃棄物収集システムと整合している必要があります。誤った表示は「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」とみなされ、消費者保護法などの観点からも摘発の対象となり得ます。デザイン段階で法務確認を徹底し、確実なコンプライアンスを目指しましょう。


参考:欧州議会「Stopping greenwashing: how the EU regulates green claims

まとめ

この記事では、EU市場への輸出企業に必須となるPPWR(包装及び包装廃棄物規則)の重要ポイントを解説しました。

  • PPWRはEU全域に直接適用され、違反時は罰金や出荷停止のリスクがある
  • 2026年8月から順次義務が適用され、2030年には全包装のリサイクル可能化が必須となる
  • プラスチック包装への再生材使用義務や、空隙率50%以下などの過剰包装規制が導入される
  • 対象は製品メーカーだけでなく、EU市場に関わるすべての包装関連事業者に及ぶ

ビジネス継続の条件となるコンプライアンスを確実にクリアするため、まずは現状の洗い出しから着手しましょう。

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