ISCC認証とは?|種類やマスバランス方式、取得メリットを徹底解説
掲載日:2026.10.21
サステナビリティ推進に欠かせない「ISCC認証」の仕組みや種類(EU・PLUS)、マスバランス方式をわかりやすく解説します。
取得のメリット・デメリットや手順も網羅的に紹介。自社の環境対応力強化に向けて、ISCC認証の基礎知識を身につけましょう。
※本コラムは、2026年10月20日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。
ISCC認証の取得をご検討の方へ
認証取得までの流れや費用についてご案内します。お見積もりのご依頼もこちらから承ります。
ISCC認証とは、持続可能なサプライチェーンを構築し、温室効果ガスの削減を客観的に証明するための国際的な認証制度です。
近年、気候変動への対策やプラスチックごみ問題への関心が世界的に高まる中で、企業には環境に配慮した事業活動が強く求められています。
その具体的な解決策の一つとして、製造業や流通業をはじめとする多くの産業で注目を集めているのが、この認証制度です。
ISCC認証とは何かを深く理解することは、急拡大するESG投資の呼び込みや、グローバル市場における競争力強化に直結します。
本記事では、ISCC認証とはどのような制度なのか、その基本的な仕組みから、ISCC EUやISCC PLUSといった種類の違い、さらに重要な概念であるマスバランス方式までを網羅的に解説します。
取得におけるメリットやデメリット、具体的な手順も詳しく紹介するため、自社のサステナビリティ推進に向けた第一歩としてぜひ参考にしてください。
ISCC認証の基本概要
ISCC認証とは、「International Sustainability and Carbon Certification」の略称であり、日本語では「国際持続可能性カーボン認証」と呼ばれます。
この制度は、バイオマスや再生可能エネルギー、リサイクル素材などの持続可能性を、サプライチェーン全体で厳格に追跡し、証明することを目的としています。
ISCC認証は、単なる環境配慮のマークではなく、原料の生産から最終製品の消費に至るまでのすべてのプロセスにおいて、定められた基準を満たしていることを第三者機関が客観的に保証する仕組みです。
ドイツで設立されて以来、現在では世界中で広く採用されており、特に環境意識の高い欧州市場において非常に強い影響力を持っています。
企業が持続可能な社会の実現に向けてどのような責任を果たしているかを可視化する上で、ISCC認証は極めて有効なツールとして機能します。
ISCC認証が設立された背景
ISCC認証は、そもそも欧州連合が定める再生可能エネルギー指令に対応するために設立された制度です。
化石燃料への依存から脱却し、温室効果ガスの排出量を削減するという世界的な潮流の中で、バイオ燃料の持続可能性を証明する客観的な基準が必要とされました。
バイオ燃料は環境に優しいとされてきましたが、その原料となる農作物を栽培するために森林破壊が行われたり、食料供給と競合したりするという深刻な問題が浮上しました。
そこで、森林破壊を伴わないことや、生物多様性を保護していることなど、環境面での持続可能性に加えて、労働環境の改善といった社会的な側面も評価の対象とする厳格な基準が求められたのです。
日本の農林水産省などの公的機関も、バイオマス資源の有効活用や持続可能な農業の推進に向けて、こうした国際認証の重要性を指摘しています。
気候変動枠組条約締約国会議などでの国際的な合意を背景に、ISCC認証とは企業が果たすべき環境責任を具体化し、グリーンウォッシュ批判を回避するための重要な枠組みの1つとしても発展してきました。
ISCC認証の主な対象製品
ISCC認証は、当初はバイオ燃料を中心とした制度でしたが、現在ではその対象範囲を大きく広げています。
農業残渣や林業廃棄物から作られるバイオマスプラスチック、使用済みプラスチックを化学的に処理したケミカルリサイクル製品、さらには食品や飼料に至るまで、多岐にわたる製品が認証の対象となります。
たとえば、飲料メーカーが採用するペットボトルや、食品メーカーの包装材、さらには自動車の内装部品など、私たちの身近な生活用品にもISCC認証を取得した素材が使われるようになっています。
日本国内でも、大手化学メーカーが、バイオマスナフサを用いた製品群に対してISCC認証を取得し、持続可能なプラスチックの供給体制を構築している事例が存在します。
このように、ISCC認証とは、炭素を含む材料に係る循環型経済の実現を目指すすべての製造業や流通業に関わる制度であると言えます。
ISCC認証の主な種類
ISCC認証は、対象となる市場や製品に応じていくつかの種類に分類されています。
自社のビジネスモデルや輸出先の地域に合わせて、適切な認証区分を選択することが非常に重要です。
ここでは、代表的な種類であるISCC EU、ISCC PLUS、ISCC CORSIAについて解説します。
それぞれの認証がどのような目的で利用されているのかを理解することで、ISCC認証がどのような柔軟性を持った制度なのかが明確になります。
各認証の違いを把握することは、無駄な投資を避け、最短ルートで環境対応力を強化するための第一歩となります。
ISCC EUの仕組み
ISCC EUとは、欧州連合が定める再生可能エネルギー指令に完全に準拠した認証制度です。
欧州市場に向けてバイオ燃料やバイオ液体、またこれらを製造するための原材料、中間原料を輸出する企業にとって、必須とも言える認証です。
この指令は、輸送部門における再生可能エネルギーの利用割合を高めることを目的としており、持続可能性の基準を満たさないバイオ燃料は、温室効果ガス削減の目標達成にカウントされません。
したがって、ISCC EUを取得することは、欧州市場でのビジネスを展開する上でのパスポートのような役割を果たします。
厳格なトレーサビリティの確保や温室効果ガス排出量の算定が求められるため、サプライチェーン全体の徹底した管理が必要となります。
原料の生産地から最終的な燃料の消費者まで、すべての過程で情報が途切れることなく記録されることが求められます。
ISCC PLUSの仕組み
ISCC PLUSとは、欧州連合の再生可能エネルギー指令の枠組みを超えて、世界中のあらゆるカーボン市場で利用できる任意の認証制度です。
「ISCC認証とは何か?」を調べる企業の多くが、このISCC PLUSに強い関心を持っています。
バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチック、食品、飼料など、EU向け以外のバイオ燃料など、幅広い製品を対象としており、循環型経済への移行を目指す企業に広く採用されています。
たとえば、日本の包装資材メーカーや日用品メーカーが、自社の環境配慮型製品の価値を証明するためにISCC PLUSを取得する事例が急増しています。
ISCC PLUSは、マスバランス方式を採用することで、既存の製造設備を活用しながら持続可能な製品を市場に供給できるという大きな特徴を持っています。
これにより、企業は巨額の設備投資を行うことなく、段階的にサステナビリティへの取り組みを推進することが可能になります。
ISCC CORSIAの仕組み
ISCC CORSIAとは、国際民間航空機関ICAOが主導する国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキームに対応した認証制度です。
航空業界は温室効果ガスの排出量が非常に多く、その削減が急務とされています。
持続可能な航空燃料の導入は、航空業界の脱炭素化において最も重要な施策の一つとして位置づけられています。
ISCC CORSIAは、この持続可能な航空燃料が厳格な環境基準を満たしていることを証明するための枠組みを提供します。
航空会社や燃料供給業者は、この認証を取得することで、国際的な排出削減目標の達成に貢献していることを客観的に示すことができます。
航空ネットワークの維持と環境保護の両立を目指す上で、ISCC認証は欠かすことのできない基盤技術を支える制度となっています。
ISCC認証におけるマスバランス方式
「ISCC認証とは何か?」を理解する上で、決して避けて通れないのがマスバランス方式という概念です。
持続可能な原料と従来の化石由来の原料を混合して製品を製造する際に、投入した持続可能な原料の割合に応じて、最終製品の一部を持続可能な製品として割り当てる管理手法です。
この方式を正しく理解し運用することが、ISCC認証をビジネスに活用するための最大の鍵となります。
環境省、経済産業省が合同で公表している「バイオプラスチック導入ロードマップ」においても、マスバランス方式を通じたバイオマス化、サーキュラーエコノミーの推進が重要な施策との一つして位置づけられており、国の方針とも合致するアプローチです。
参考:環境省 環境再生・資源循環 バイオプラスチック導入ロードマップ
マスバランス方式の定義
マスバランス方式とは、製造プロセスにおいて、バイオマスやリサイクル原料といった持続可能な特性を持つ原料と、従来の化石由来の原料を物理的に混合して処理する手法です。
化学産業やプラスチック製造業のように、巨大なプラントで複雑な熱分解や重合反応を行う産業では、持続可能な原料だけを完全に分離して製造することは技術的にもコスト的にも非常に困難です。
そこで、システム全体に入力された持続可能な原料の量と、出力された製品の量を厳密に帳簿上で管理し、入力した割合と同等の製品に対して持続可能性の価値を割り当てます。
これにより、最終製品の分子レベルでは持続可能な原料と化石原料が混ざっていても、認証で定められた条件を満たせば、証明書上は特定の製品の100%を持続可能な製品として販売することが認められます。
ISCC認証では、マスバランス方式における複雑な計算と追跡透明性を持って行うための要求事項を定めています。
セグリゲーション方式との違い
マスバランス方式と対比される管理手法として、セグリゲーション方式があります。
セグリゲーション方式とは、持続可能な原料と従来の原料を、輸送から製造、保管に至るすべてのプロセスで完全に物理的に分離して管理する手法です。
この方式を採用すれば、最終製品には持続可能な原料のみが含まれていることが確実になります。
しかし、専用の製造ラインや保管タンクを新たに建設する必要があるため、膨大な初期投資が必要となります。
また、工場の稼働効率も著しく低下する懸念があります。
一方、マスバランス方式であれば、既存の製造設備やサプライチェーンをそのまま活用できるため、導入のハードルを大幅に下げることができます。ISCC認証とは、このマスバランス方式を厳格なルールのもとで認めることにより、企業が持続可能な社会への移行を段階的かつ現実的に進めることを強力に後押しする制度なのです。
また、今回の記事ではISCC認証でのマスバランス方式にフォーカスしていますが、ISCC認証でセグリゲーション方式を採用することも可能です。
ISCC認証を取得するメリット
ISCC認証とは、企業にとって単なるコストや義務ではなく、ビジネス上の大きなメリットをもたらす戦略的な投資です。
環境配慮への要求が強まる現代において、認証を取得することは企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。
ここでは、ISCC認証を取得することで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
自社の経営課題と照らし合わせながら、どのような価値を創出できるかを検討してください。
企業価値や信頼性の向上
ISCC認証とは、第三者機関による厳格な審査を経て付与される国際的なお墨付きです。
自社製品が持続可能な原料を使用し、環境負荷の低減に貢献していることを客観的に証明できるため、消費者や取引先からの信頼を強力に獲得することができます。
近年、ESG投資の規模が急速に拡大する中で、投資家は企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みを厳しく評価しています。
実態を伴わない環境アピールであるグリーンウォッシュに対する批判が高まる中、ISCC認証を取得しているという事実は、環境リスクへの対応力や持続可能な経営体制を示す確固たるシグナルとなります。
これにより、企業価値の向上や金融機関からの資金調達の円滑化につながるという大きなメリットがあります。
グローバル市場での競争力強化
欧州をはじめとする環境先進国では、公共調達や民間企業の調達基準において、環境認証の取得を必須条件とするケースが急増しています。
ISCC認証は、世界中で認知されているグローバルスタンダードであるため、取得することで海外市場への参入障壁を大幅に下げることができます。
特に、グローバルに事業を展開する多国籍企業を顧客に持つ部品メーカーや素材メーカーにとって、ISCC認証の有無は取引を継続できるかどうかの重要な判断基準となります。
競合他社に先駆けて認証を取得することで、市場での優位性を確立し、新たなビジネスチャンスを創出することが可能になります。
環境対応力を武器にしたマーケティング戦略を展開する上で、ISCC認証は非常に強力な裏付けとなります。
サプライチェーンの透明性確保
ISCC認証は、原料の調達から最終製品の出荷に至るまで、サプライチェーン全体のトレーサビリティを確保することを求めています。
認証を取得する過程で、自社のサプライチェーンを詳細に可視化し、特にバイオ由来の原材料に関しては、潜在的な環境リスクや人権リスクを洗い出すことができます。
違法な森林伐採に関与していないか、労働環境に問題のある農場から調達していないかといった点を確認し、是正措置を講じることが求められます。
各省庁から発行されている「プラスチック資源循環戦略」においても、サプライチェーン全体での資源循環が求められており、ISCC認証はこうした国の政策方針とも整合性のある枠組みです。
結果として、サプライチェーン全体のレジリエンスを向上させることができます。
参考:プラスチック資源循環戦略
ISCC認証取得のハードル
ISCC認証は、多くのメリットをもたらす一方で、取得や維持にはいくつかの課題や注意点が存在します。
メリットだけでなくデメリットも正確に把握し、自社のリソースと照らし合わせて慎重に検討することが不可欠です。
事前の準備不足は、プロジェクトの遅延や予期せぬコストの発生につながるため、経営層を含めた全社的な理解と協力体制の構築が求められます。
認証取得や維持にかかるコスト
ISCC認証は、取得時に審査費用や登録費用が発生するだけでなく、毎年の更新審査にも費用がかかります。
認証機関に支払う直接的な費用に加えて、社内の管理体制を構築するためのシステム導入費や、専門的な知識を持つコンサルタントを利用する場合の外部委託費なども考慮する必要があります。
特に中小企業にとっては、これらのコストが経営上の重い負担となる可能性があります。
取得によって得られる売上の増加やブランド価値の向上、取引先との関係強化といったリターンと、必要な投資額を比較し、長期的な視点で費用対効果を慎重に評価することが重要です。
補助金や助成金の活用も視野に入れながら、無理のない資金計画を立てることが求められます。
運用体制構築の業務負荷
ISCC認証は、単に書類を提出すれば取得できるものではありません。
マスバランス方式を採用する場合、原料の受け入れから製品の出荷までの数量データを正確に記録し、追跡できる厳密な管理システムを構築する必要があります。
これには、現場の作業員から管理部門まで、多くの従業員に対する教育や記録やデータ管理フローの大幅な見直しが伴います。
また、サプライチェーン全体の持続可能性を証明するためには、原料を供給するサプライヤーの協力が不可欠です。
サプライヤーに対して認証の趣旨を丁寧に説明し、認証取得してもらうことが必要です。
このための調整業務にも多大な時間と労力を要することがあります。
社内の抵抗感を払拭し、新しい業務プロセスを定着させるための強力なリーダーシップが必要となります。
ISCC認証取得について相談してみませんか?
認証範囲や事業内容によって、必要な準備や取得費用は異なります。
SGSジャパンが認証取得までの流れをご案内します。
ISCC認証の取得手順
ISCC認証は、厳格なルールに基づいて運用されているため、取得に向けては計画的なステップを踏む必要があります。
ここでは、一般的なISCC認証の取得手順について詳しく解説します。
全体のスケジュール感を把握し、各フェーズで必要なタスクを整理することで、スムーズな認証取得を目指すことができます。
事前の準備から本審査、そして取得後の運用に至るまで、一連の流れを理解しておきましょう。
認証機関への問い合わせと事前準備
まず初めに、ISCCの公式ウェブサイトから、自社の事業内容や対象地域に対応した認証機関を選定します。
SGSジャパンなどの実績ある認証機関に問い合わせを行い、取得に向けた要件や見積もりを確認します。
並行して、社内でプロジェクトチームを立ち上げ、現状の業務プロセスとISCCの要求事項とのギャップ分析を行います。
不足している管理手順や文書を特定し、マニュアルの作成やデータ追跡システムの構築を進めます。
この事前準備の段階でどれだけ精緻な計画を立てられるかが、後の審査を円滑に進めるための鍵となります。
必要に応じて外部の専門家のサポートを受けることも、プロジェクトを成功に導くための有効な手段となります。
また、ISCCHUBという、ISCC指定のプラットフォームに認証取得予定の拠点の情報を登録し、認証機関とISCCの承認を得ることが初回審査前に必要です。
内部監査と初回審査の実施
準備が整ったら、社内の独立した担当者による内部監査を実施します。
この時は初回審査を受ける際に必要な事項、またISCC認証を始めるにあたり、要求事項を満たすことができる状態になっているか確認します。
内部監査で発見された不適合事項については、原因を究明し是正措置を講じます。
改善が完了した後、認証機関による初回審査を受けます。
現場の視察や担当者へのインタビューが行われ、トレーサビリティの確保や温室効果ガス排出量の算定が正確に行われているかが厳しくチェックされます。
審査員からの指摘事項に対しては、速やかに対応し、透明性を証明することが求められます。
認証書の発行と更新手続き
本審査においてすべての要求事項を満たしていることが確認されると、認証機関からISCC認証書が発行されます。
これにより、ISCCの要件に従って運用を開始することが可能になります。
自社の製品にISCCのロゴを使用し、持続可能な製品として市場に大々的にアピールすることが可能になります。
ただし、ISCC認証は一度取得すれば終わりというものではありません。
認証の有効期間は一年間であり、毎年更新審査を受ける必要があります。
内部監査ではマスバランス管理手順やトレーサビリティ確保が機能しているか、要求事項を満たしているかを確認し続ける必要があります。
定期的な社内教育を実施し、従業員の意識を高く保つことが、認証を維持し、企業風土として定着させるための重要なポイントです。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- ISCC認証は持続可能性と温室効果ガス削減を証明することができる国際的な制度です。
- EU向け燃料のISCCEUや化学製品向けのISCCPLUSなど目的に応じた種類が存在します。
- マスバランス方式により既存設備を活用した環境配慮型の製造が可能です。
- 認証取得により企業価値の向上やサプライチェーンの透明性確保が期待できます。
- コストや業務負荷を考慮し、計画的な取得手順を踏むことが重要です。
自社の事業戦略に合わせて最適な認証区分を選択し、環境対応力を強化していきましょう。
掲載日:2026.10.21
サステナビリティ推進に欠かせない「ISCC認証」の仕組みや種類(EU・PLUS)、マスバランス方式をわかりやすく解説します。
取得のメリット・デメリットや手順も網羅的に紹介。自社の環境対応力強化に向けて、ISCC認証の基礎知識を身につけましょう。
※本コラムは、2026年10月20日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。
ISCC認証の取得をご検討の方へ
認証取得までの流れや費用についてご案内します。お見積もりのご依頼もこちらから承ります。
ISCC認証とは、持続可能なサプライチェーンを構築し、温室効果ガスの削減を客観的に証明するための国際的な認証制度です。
近年、気候変動への対策やプラスチックごみ問題への関心が世界的に高まる中で、企業には環境に配慮した事業活動が強く求められています。
その具体的な解決策の一つとして、製造業や流通業をはじめとする多くの産業で注目を集めているのが、この認証制度です。
ISCC認証とは何かを深く理解することは、急拡大するESG投資の呼び込みや、グローバル市場における競争力強化に直結します。
本記事では、ISCC認証とはどのような制度なのか、その基本的な仕組みから、ISCC EUやISCC PLUSといった種類の違い、さらに重要な概念であるマスバランス方式までを網羅的に解説します。
取得におけるメリットやデメリット、具体的な手順も詳しく紹介するため、自社のサステナビリティ推進に向けた第一歩としてぜひ参考にしてください。
ISCC認証とは、「International Sustainability and Carbon Certification」の略称であり、日本語では「国際持続可能性カーボン認証」と呼ばれます。
この制度は、バイオマスや再生可能エネルギー、リサイクル素材などの持続可能性を、サプライチェーン全体で厳格に追跡し、証明することを目的としています。
ISCC認証は、単なる環境配慮のマークではなく、原料の生産から最終製品の消費に至るまでのすべてのプロセスにおいて、定められた基準を満たしていることを第三者機関が客観的に保証する仕組みです。
ドイツで設立されて以来、現在では世界中で広く採用されており、特に環境意識の高い欧州市場において非常に強い影響力を持っています。
企業が持続可能な社会の実現に向けてどのような責任を果たしているかを可視化する上で、ISCC認証は極めて有効なツールとして機能します。
ISCC認証が設立された背景
ISCC認証は、そもそも欧州連合が定める再生可能エネルギー指令に対応するために設立された制度です。
化石燃料への依存から脱却し、温室効果ガスの排出量を削減するという世界的な潮流の中で、バイオ燃料の持続可能性を証明する客観的な基準が必要とされました。
バイオ燃料は環境に優しいとされてきましたが、その原料となる農作物を栽培するために森林破壊が行われたり、食料供給と競合したりするという深刻な問題が浮上しました。
そこで、森林破壊を伴わないことや、生物多様性を保護していることなど、環境面での持続可能性に加えて、労働環境の改善といった社会的な側面も評価の対象とする厳格な基準が求められたのです。
日本の農林水産省などの公的機関も、バイオマス資源の有効活用や持続可能な農業の推進に向けて、こうした国際認証の重要性を指摘しています。
気候変動枠組条約締約国会議などでの国際的な合意を背景に、ISCC認証とは企業が果たすべき環境責任を具体化し、グリーンウォッシュ批判を回避するための重要な枠組みの1つとしても発展してきました。
ISCC認証の主な対象製品
ISCC認証は、当初はバイオ燃料を中心とした制度でしたが、現在ではその対象範囲を大きく広げています。
農業残渣や林業廃棄物から作られるバイオマスプラスチック、使用済みプラスチックを化学的に処理したケミカルリサイクル製品、さらには食品や飼料に至るまで、多岐にわたる製品が認証の対象となります。
たとえば、飲料メーカーが採用するペットボトルや、食品メーカーの包装材、さらには自動車の内装部品など、私たちの身近な生活用品にもISCC認証を取得した素材が使われるようになっています。
日本国内でも、大手化学メーカーが、バイオマスナフサを用いた製品群に対してISCC認証を取得し、持続可能なプラスチックの供給体制を構築している事例が存在します。
このように、ISCC認証とは、炭素を含む材料に係る循環型経済の実現を目指すすべての製造業や流通業に関わる制度であると言えます。
ISCC認証は、対象となる市場や製品に応じていくつかの種類に分類されています。
自社のビジネスモデルや輸出先の地域に合わせて、適切な認証区分を選択することが非常に重要です。
ここでは、代表的な種類であるISCC EU、ISCC PLUS、ISCC CORSIAについて解説します。
それぞれの認証がどのような目的で利用されているのかを理解することで、ISCC認証がどのような柔軟性を持った制度なのかが明確になります。
各認証の違いを把握することは、無駄な投資を避け、最短ルートで環境対応力を強化するための第一歩となります。
ISCC EUの仕組み
ISCC EUとは、欧州連合が定める再生可能エネルギー指令に完全に準拠した認証制度です。
欧州市場に向けてバイオ燃料やバイオ液体、またこれらを製造するための原材料、中間原料を輸出する企業にとって、必須とも言える認証です。
この指令は、輸送部門における再生可能エネルギーの利用割合を高めることを目的としており、持続可能性の基準を満たさないバイオ燃料は、温室効果ガス削減の目標達成にカウントされません。
したがって、ISCC EUを取得することは、欧州市場でのビジネスを展開する上でのパスポートのような役割を果たします。
厳格なトレーサビリティの確保や温室効果ガス排出量の算定が求められるため、サプライチェーン全体の徹底した管理が必要となります。
原料の生産地から最終的な燃料の消費者まで、すべての過程で情報が途切れることなく記録されることが求められます。
ISCC PLUSの仕組み
ISCC PLUSとは、欧州連合の再生可能エネルギー指令の枠組みを超えて、世界中のあらゆるカーボン市場で利用できる任意の認証制度です。
「ISCC認証とは何か?」を調べる企業の多くが、このISCC PLUSに強い関心を持っています。
バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチック、食品、飼料など、EU向け以外のバイオ燃料など、幅広い製品を対象としており、循環型経済への移行を目指す企業に広く採用されています。
たとえば、日本の包装資材メーカーや日用品メーカーが、自社の環境配慮型製品の価値を証明するためにISCC PLUSを取得する事例が急増しています。
ISCC PLUSは、マスバランス方式を採用することで、既存の製造設備を活用しながら持続可能な製品を市場に供給できるという大きな特徴を持っています。
これにより、企業は巨額の設備投資を行うことなく、段階的にサステナビリティへの取り組みを推進することが可能になります。
ISCC CORSIAの仕組み
ISCC CORSIAとは、国際民間航空機関ICAOが主導する国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキームに対応した認証制度です。
航空業界は温室効果ガスの排出量が非常に多く、その削減が急務とされています。
持続可能な航空燃料の導入は、航空業界の脱炭素化において最も重要な施策の一つとして位置づけられています。
ISCC CORSIAは、この持続可能な航空燃料が厳格な環境基準を満たしていることを証明するための枠組みを提供します。
航空会社や燃料供給業者は、この認証を取得することで、国際的な排出削減目標の達成に貢献していることを客観的に示すことができます。
航空ネットワークの維持と環境保護の両立を目指す上で、ISCC認証は欠かすことのできない基盤技術を支える制度となっています。
「ISCC認証とは何か?」を理解する上で、決して避けて通れないのがマスバランス方式という概念です。
持続可能な原料と従来の化石由来の原料を混合して製品を製造する際に、投入した持続可能な原料の割合に応じて、最終製品の一部を持続可能な製品として割り当てる管理手法です。
この方式を正しく理解し運用することが、ISCC認証をビジネスに活用するための最大の鍵となります。
環境省、経済産業省が合同で公表している「バイオプラスチック導入ロードマップ」においても、マスバランス方式を通じたバイオマス化、サーキュラーエコノミーの推進が重要な施策との一つして位置づけられており、国の方針とも合致するアプローチです。
参考:環境省 環境再生・資源循環 バイオプラスチック導入ロードマップ
マスバランス方式の定義
マスバランス方式とは、製造プロセスにおいて、バイオマスやリサイクル原料といった持続可能な特性を持つ原料と、従来の化石由来の原料を物理的に混合して処理する手法です。
化学産業やプラスチック製造業のように、巨大なプラントで複雑な熱分解や重合反応を行う産業では、持続可能な原料だけを完全に分離して製造することは技術的にもコスト的にも非常に困難です。
そこで、システム全体に入力された持続可能な原料の量と、出力された製品の量を厳密に帳簿上で管理し、入力した割合と同等の製品に対して持続可能性の価値を割り当てます。
これにより、最終製品の分子レベルでは持続可能な原料と化石原料が混ざっていても、認証で定められた条件を満たせば、証明書上は特定の製品の100%を持続可能な製品として販売することが認められます。
ISCC認証では、マスバランス方式における複雑な計算と追跡透明性を持って行うための要求事項を定めています。
セグリゲーション方式との違い
マスバランス方式と対比される管理手法として、セグリゲーション方式があります。
セグリゲーション方式とは、持続可能な原料と従来の原料を、輸送から製造、保管に至るすべてのプロセスで完全に物理的に分離して管理する手法です。
この方式を採用すれば、最終製品には持続可能な原料のみが含まれていることが確実になります。
しかし、専用の製造ラインや保管タンクを新たに建設する必要があるため、膨大な初期投資が必要となります。
また、工場の稼働効率も著しく低下する懸念があります。
一方、マスバランス方式であれば、既存の製造設備やサプライチェーンをそのまま活用できるため、導入のハードルを大幅に下げることができます。ISCC認証とは、このマスバランス方式を厳格なルールのもとで認めることにより、企業が持続可能な社会への移行を段階的かつ現実的に進めることを強力に後押しする制度なのです。
また、今回の記事ではISCC認証でのマスバランス方式にフォーカスしていますが、ISCC認証でセグリゲーション方式を採用することも可能です。
ISCC認証とは、企業にとって単なるコストや義務ではなく、ビジネス上の大きなメリットをもたらす戦略的な投資です。
環境配慮への要求が強まる現代において、認証を取得することは企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。
ここでは、ISCC認証を取得することで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
自社の経営課題と照らし合わせながら、どのような価値を創出できるかを検討してください。
企業価値や信頼性の向上
ISCC認証とは、第三者機関による厳格な審査を経て付与される国際的なお墨付きです。
自社製品が持続可能な原料を使用し、環境負荷の低減に貢献していることを客観的に証明できるため、消費者や取引先からの信頼を強力に獲得することができます。
近年、ESG投資の規模が急速に拡大する中で、投資家は企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みを厳しく評価しています。
実態を伴わない環境アピールであるグリーンウォッシュに対する批判が高まる中、ISCC認証を取得しているという事実は、環境リスクへの対応力や持続可能な経営体制を示す確固たるシグナルとなります。
これにより、企業価値の向上や金融機関からの資金調達の円滑化につながるという大きなメリットがあります。
グローバル市場での競争力強化
欧州をはじめとする環境先進国では、公共調達や民間企業の調達基準において、環境認証の取得を必須条件とするケースが急増しています。
ISCC認証は、世界中で認知されているグローバルスタンダードであるため、取得することで海外市場への参入障壁を大幅に下げることができます。
特に、グローバルに事業を展開する多国籍企業を顧客に持つ部品メーカーや素材メーカーにとって、ISCC認証の有無は取引を継続できるかどうかの重要な判断基準となります。
競合他社に先駆けて認証を取得することで、市場での優位性を確立し、新たなビジネスチャンスを創出することが可能になります。
環境対応力を武器にしたマーケティング戦略を展開する上で、ISCC認証は非常に強力な裏付けとなります。
サプライチェーンの透明性確保
ISCC認証は、原料の調達から最終製品の出荷に至るまで、サプライチェーン全体のトレーサビリティを確保することを求めています。
認証を取得する過程で、自社のサプライチェーンを詳細に可視化し、特にバイオ由来の原材料に関しては、潜在的な環境リスクや人権リスクを洗い出すことができます。
違法な森林伐採に関与していないか、労働環境に問題のある農場から調達していないかといった点を確認し、是正措置を講じることが求められます。
各省庁から発行されている「プラスチック資源循環戦略」においても、サプライチェーン全体での資源循環が求められており、ISCC認証はこうした国の政策方針とも整合性のある枠組みです。
結果として、サプライチェーン全体のレジリエンスを向上させることができます。
参考:プラスチック資源循環戦略
ISCC認証は、多くのメリットをもたらす一方で、取得や維持にはいくつかの課題や注意点が存在します。
メリットだけでなくデメリットも正確に把握し、自社のリソースと照らし合わせて慎重に検討することが不可欠です。
事前の準備不足は、プロジェクトの遅延や予期せぬコストの発生につながるため、経営層を含めた全社的な理解と協力体制の構築が求められます。
認証取得や維持にかかるコスト
ISCC認証は、取得時に審査費用や登録費用が発生するだけでなく、毎年の更新審査にも費用がかかります。
認証機関に支払う直接的な費用に加えて、社内の管理体制を構築するためのシステム導入費や、専門的な知識を持つコンサルタントを利用する場合の外部委託費なども考慮する必要があります。
特に中小企業にとっては、これらのコストが経営上の重い負担となる可能性があります。
取得によって得られる売上の増加やブランド価値の向上、取引先との関係強化といったリターンと、必要な投資額を比較し、長期的な視点で費用対効果を慎重に評価することが重要です。
補助金や助成金の活用も視野に入れながら、無理のない資金計画を立てることが求められます。
運用体制構築の業務負荷
ISCC認証は、単に書類を提出すれば取得できるものではありません。
マスバランス方式を採用する場合、原料の受け入れから製品の出荷までの数量データを正確に記録し、追跡できる厳密な管理システムを構築する必要があります。
これには、現場の作業員から管理部門まで、多くの従業員に対する教育や記録やデータ管理フローの大幅な見直しが伴います。
また、サプライチェーン全体の持続可能性を証明するためには、原料を供給するサプライヤーの協力が不可欠です。
サプライヤーに対して認証の趣旨を丁寧に説明し、認証取得してもらうことが必要です。
このための調整業務にも多大な時間と労力を要することがあります。
社内の抵抗感を払拭し、新しい業務プロセスを定着させるための強力なリーダーシップが必要となります。
ISCC認証取得について相談してみませんか?
認証範囲や事業内容によって、必要な準備や取得費用は異なります。
SGSジャパンが認証取得までの流れをご案内します。
ISCC認証は、厳格なルールに基づいて運用されているため、取得に向けては計画的なステップを踏む必要があります。
ここでは、一般的なISCC認証の取得手順について詳しく解説します。
全体のスケジュール感を把握し、各フェーズで必要なタスクを整理することで、スムーズな認証取得を目指すことができます。
事前の準備から本審査、そして取得後の運用に至るまで、一連の流れを理解しておきましょう。
認証機関への問い合わせと事前準備
まず初めに、ISCCの公式ウェブサイトから、自社の事業内容や対象地域に対応した認証機関を選定します。
SGSジャパンなどの実績ある認証機関に問い合わせを行い、取得に向けた要件や見積もりを確認します。
並行して、社内でプロジェクトチームを立ち上げ、現状の業務プロセスとISCCの要求事項とのギャップ分析を行います。
不足している管理手順や文書を特定し、マニュアルの作成やデータ追跡システムの構築を進めます。
この事前準備の段階でどれだけ精緻な計画を立てられるかが、後の審査を円滑に進めるための鍵となります。
必要に応じて外部の専門家のサポートを受けることも、プロジェクトを成功に導くための有効な手段となります。
また、ISCCHUBという、ISCC指定のプラットフォームに認証取得予定の拠点の情報を登録し、認証機関とISCCの承認を得ることが初回審査前に必要です。
内部監査と初回審査の実施
準備が整ったら、社内の独立した担当者による内部監査を実施します。
この時は初回審査を受ける際に必要な事項、またISCC認証を始めるにあたり、要求事項を満たすことができる状態になっているか確認します。
内部監査で発見された不適合事項については、原因を究明し是正措置を講じます。
改善が完了した後、認証機関による初回審査を受けます。
現場の視察や担当者へのインタビューが行われ、トレーサビリティの確保や温室効果ガス排出量の算定が正確に行われているかが厳しくチェックされます。
審査員からの指摘事項に対しては、速やかに対応し、透明性を証明することが求められます。
認証書の発行と更新手続き
本審査においてすべての要求事項を満たしていることが確認されると、認証機関からISCC認証書が発行されます。
これにより、ISCCの要件に従って運用を開始することが可能になります。
自社の製品にISCCのロゴを使用し、持続可能な製品として市場に大々的にアピールすることが可能になります。
ただし、ISCC認証は一度取得すれば終わりというものではありません。
認証の有効期間は一年間であり、毎年更新審査を受ける必要があります。
内部監査ではマスバランス管理手順やトレーサビリティ確保が機能しているか、要求事項を満たしているかを確認し続ける必要があります。
定期的な社内教育を実施し、従業員の意識を高く保つことが、認証を維持し、企業風土として定着させるための重要なポイントです。
この記事の要点をまとめます。
- ISCC認証は持続可能性と温室効果ガス削減を証明することができる国際的な制度です。
- EU向け燃料のISCCEUや化学製品向けのISCCPLUSなど目的に応じた種類が存在します。
- マスバランス方式により既存設備を活用した環境配慮型の製造が可能です。
- 認証取得により企業価値の向上やサプライチェーンの透明性確保が期待できます。
- コストや業務負荷を考慮し、計画的な取得手順を踏むことが重要です。
自社の事業戦略に合わせて最適な認証区分を選択し、環境対応力を強化していきましょう。
監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート


