ELV規則の改正内容を解説!|再生材義務化や日本企業への影響とは
掲載日:2026.06.19
ELV規則とは、廃車される自動車のリサイクルに関する欧州の規則です。
本記事では、2025年末に暫定合意に至ったELV規則改正の主なポイントや、それによって日本企業に求められる具体的な対応策をわかりやすく解説します。
今後のスケジュールも紹介するため、欧州向けビジネスに携わる方はぜひご一読ください。
※本コラムは、2026年6月10日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。
- ELV規則とはそもそも何か?
- 今回のELV規則改正で何が変わる?
- なぜ今、ELV規則は改正されるのか?
- 改正で企業に求められる具体的な対応とは?
- 日本の自動車関連企業への影響は?
- 今後のスケジュールはどうなっている?
- 日本国内でも資源循環政策は強化されている
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ELV規則案の最新動向を整理するとともに、再生材含有率の証明、ポストコンシューマー材の扱い、ELV由来材のトレーサビリティ、マスバランス管理、リサイクル認証・第三者検証の活用ポイントを解説します。
ISCC PLUSなどの代表的な国際認証スキームにも触れながら、自動車OEM、部品メーカー、材料メーカー、商社、リサイクラーが今から確認すべき実務対応をわかりやすく紹介します。
欧州でビジネスを展開する自動車関連企業の担当者にとって、環境規制の動向を追うことは避けて通れない課題です。
特に「ELV規則」の改正は、自動車メーカーだけでなく、素材や部品を供給するサプライヤーにとっても事業への影響が極めて大きいテーマといえます。
改正案が複雑で、具体的に自社が何をすべきか判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2025年末に欧州議会とEU理事会で暫定合意された内容を踏まえ、ELV規則改正の重要ポイントと日本企業に求められる対策をわかりやすく解説します。
読み終わる頃には、今後のスケジュール感や社内で検討すべきアクションが明確になるはずです。
ELV規則とはそもそも何か?
ELV規則という言葉を聞いたことはあっても、その詳細や法的な位置づけを正確に理解できている自信がないという方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、この規制がどのような目的で作られ、これまでにどのような役割を果たしてきたのか、基本をおさらいしておきましょう。
廃車のリサイクルを促進する規則
ELV規則(Regulation on End-of-Life Vehicles)は、役目を終えて廃車となった自動車(ELV)が環境に与える負荷を減らすことを目的とした欧州連合(EU)の法規制です。
もともとは2000年に制定された「ELV指令」として知られていましたが、今回の改正によって加盟国に直接的な法的拘束力を持つ「規則」へと格上げされることになりました。
この規制の主な狙いは、廃棄物の発生を抑制することと、再利用やリサイクルを促進して資源を循環させることにあります。
具体的には、自動車メーカーに対して、新車を設計する段階からリサイクルのしやすさを考慮することや、有害物質の使用を制限することを求めています。
参考:欧州委員会「End-of-life vehicles Regulation」
欧州の環境政策が背景にある
この規制の根底にあるのは、EUが掲げる強力な環境政策です。
EUは「欧州グリーンディール」という成長戦略の中で、2050年までに気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指しており、その重要な柱の一つがサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現です。
自動車産業は多くの資源を消費する産業であるため、ここでの資源循環を確立することがEU全体の目標達成に不可欠だと考えられています。
従来の「作って、使って、捨てる」という一方通行の経済モデルから脱却し、廃棄物を新たな資源として活用する仕組みへの転換が、この規則を通じて強力に推進されているのです。
| 項目 | 概要 |
| 名称 | 自動車の循環設計および廃車管理に関する規則(ELV規則) |
| 前身 | ELV指令(Directive 2000/53/EC) |
| 主な目的 | 廃車のリサイクル促進、有害物質の削減、資源循環の実現 |
| 法的拘束力 | EU全加盟国に直接適用(国内法化の手続き不要) |
参考:欧州委員会「The European Green Deal」
対象は欧州で販売される自動車
この規制の直接的な対象となるのは、EU域内で販売される自動車です。
つまり、日本やその他の国で製造された自動車であっても、EU市場に輸出して販売する場合には、このELV規則を遵守する必要があります。
これまでは主に乗用車や小型商用車が対象でしたが、今回の改正ではその範囲がさらに広がることが議論されてきました。
したがって、完成車メーカーはもちろんのこと、そこに部品や素材を納入している日系サプライヤーにとっても、決して対岸の火事ではありません。
EUの基準を満たさない製品は市場から排除されるリスクがあるため、関連企業は常に最新の要件を確認し続ける必要があります。
今回のELV規則改正で何が変わる?
ここからが本記事の核心部分です。
これまでの指令から規則へと変わる中で、具体的にどのような義務が新たに追加されるのでしょうか。
2025年末の暫定合意内容などを基に、企業実務に大きな影響を与える変更点を解説します。
再生プラスチックの使用が義務化
今回の改正で最も注目すべき点は、新車に使用するプラスチックに再生材(リサイクル材)の使用義務が課されることです。
暫定合意の内容によると、規則施行から一定期間後に販売される新車は、車両に使用されるプラスチック総重量のうち、25%を再生プラスチックにしなければなりません。
さらに、その25%のうちの20%(当初案では25%)は、廃車から回収されたプラスチック(クローズドループ)である必要があります。
これまでは努力目標や自主的な取り組みに委ねられていた部分が、明確な数値目標として義務化されるため、自動車メーカーや樹脂メーカーは材料の調達戦略を根本から見直す必要に迫られます。
参考:欧州委員会「Circular economy: Council and Parliament strike deal on rules for vehicle circularity and management of end-of-life vehicles」
対象車種や部品の範囲が拡大
規制の対象となる車両の範囲も大幅に拡大されます。
これまでのELV指令では対象外だった、トラックやバスといった大型車両、さらにはオートバイなどの二輪車も新たに規制の枠組みに含まれることになりました。
これにより、商用車メーカーや二輪車メーカーも、乗用車メーカーと同様に、有害物質の管理やリサイクル設計への対応が求められるようになります。
また、特定の部品に関しては、取り外しやすさや情報の開示に関する要件も厳格化される見込みです。
これまで規制の対象外だった企業も、自社製品が新たなルールの適用範囲に入っていないか、早急に確認する必要があるでしょう。
拡大生産者責任(EPR)が導入
廃車の処理費用に関する責任の所在も明確化されます。
今回の改正では、拡大生産者責任(EPR)の導入が明記されました。
これは、製品の製造者(自動車メーカー)が、製品の使用済み段階における処理やリサイクルについても、物理的および金銭的な責任を負うという考え方です。
具体的には、廃車のリサイクル処理にかかるコストの一部を自動車メーカーが負担する仕組みが整備されることになります。
これにより、リサイクル性の低い車を作れば作るほど、メーカー側のコスト負担が増える構造になるため、経済的なインセンティブを通じて設計段階からの改善を促す狙いがあります。
| 変更点 | 概要 |
| 再生材利用義務 | プラスチックの25%を再生材に(うち20%は廃車由来) |
| 対象車両の拡大 | トラック、バス、二輪車も対象に追加 |
| 責任範囲の拡大 | 拡大生産者責任(EPR)によりメーカーが処理費用を負担 |
| デジタル管理 | 車両情報のデジタル化と追跡管理の強化 |
有害物質の規制がさらに強化
環境や人体への影響が懸念される有害物質の使用制限も、引き続き重要なテーマです。
鉛、水銀、カドミウム、六価クロムといった従来の規制物質(SOC4物質)については、原則使用禁止のルールが維持されるとともに、例外的に使用が認められていた適用除外項目(免除リスト)の見直しが進められます。
技術の進歩によって代替が可能になった用途から順次、免除が取り消されていく流れは今後も続くでしょう。
また、将来的には規制対象となる物質が追加される可能性もあり、企業は代替材料の開発や採用を常に検討し続ける体制が求められます。
参考:欧州委員会「End-of-Life Vehicles」
廃車のトレーサビリティを強化
廃車がどこでどのように処理されたかを追跡するトレーサビリティの強化も、今回の改正の大きな柱です。
「循環型車両パスポート(Circular Vehicle Passport)」と呼ばれるデジタルツールの導入などが検討されており、車両に使用されている素材や部品の情報をデジタルデータとして管理し、解体業者やリサイクル業者がアクセスできるようにする仕組みです。
これにより、どの部品にどのような有害物質が含まれているか、どの部品が再利用可能かが一目でわかるようになり、適正な処理と資源回収が効率化されることが期待されています。
参考:欧州委員会「Proposal for a Regulation on circularity requirements for vehicle design and management of end-of-life vehicles(ELV規則案 Article 13)」
なぜ今、ELV規則は改正されるのか?
これほど大規模な改正が行われる背景には、欧州が抱える深刻な課題があります。
単なる環境保護だけでなく、経済的な戦略や資源安全保障の観点も深く関わっています。
サーキュラーエコノミー実現のため
最大の理由は、先述したサーキュラーエコノミーへの移行を加速させるためです。
EUは、資源を域内で循環させることで、外部からの資源依存度を下げ、経済の自律性を高めようとしています。
自動車産業は鉄、アルミニウム、プラスチック、銅、レアメタルなど、多種多様な資源を大量に消費する産業です。
これらの資源を廃車から効率的に回収し、再び新車の製造に利用するサイクルを確立できれば、環境負荷を減らせるだけでなく、資源価格の変動リスクや供給途絶のリスクを回避することができます。
ELV規則の改正は、この資源循環システムを構築するための駆動力として位置づけられているのです。
参考:欧州員会「Circular Economy」
プラスチックのリサイクル率が低迷
特にプラスチックのリサイクルに関しては、現状への危機感が背景にあります。
金属類のリサイクルが進んでいる一方で、自動車由来のプラスチックの多くは、分別が難しかったりコストがかかったりするため、焼却処理や埋め立て処分に回されているのが実情です。
新車への再生プラスチック使用を義務化することで、強制的に再生材の需要(マーケット)を作り出し、リサイクル技術への投資や回収スキームの整備を促進しようというのがEUの狙いです。
需要があれば供給体制も整うという市場原理を活用し、停滞しているプラスチックリサイクルを打破しようとしています。
| 課題 | 改正による解決策 |
| 資源枯渇・価格高騰 | 域内での資源循環を確立し、輸入依存度を下げる |
| プラスチック廃棄物 | 再生材使用義務化により、リサイクル市場を創出する |
| 不適正処理・不法投棄 | デジタル管理と輸出規制強化で、廃車の行方を追跡する |
行方不明車両の問題を解決する
EUでは年間数百万台もの廃車が、統計上「行方不明(Missing Vehicles)」になっていると言われています。
これらは正規のルートを経ずに解体されたり、中古車として域外へ不法に輸出されたりしていると推測されています。
こうした車両は適切な環境対策がなされずに処理されることが多く、環境汚染の原因となっているほか、貴重な資源がEU域外へ流出することにもつながっています。
今回の改正では、廃車の定義を明確化し、中古車として輸出する際の検査を厳格化することで、こうした違法なルートを遮断し、正規のリサイクルルートに乗せることを目指しています。
参考:欧州委員会「End-of-life vehicles Regulation」
改正で企業に求められる具体的な対応とは?
では、こうした改正を受けて、企業は具体的にどのようなアクションを起こすべきでしょうか。
ここでは、メーカーやサプライヤーが取り組むべき実務的な対応策を整理します。
製品の設計思想を見直す
まず必要になるのが、製品設計の抜本的な見直しです。
「Design for Recycling(リサイクルのための設計)」の考え方を導入し、解体のしやすさや、素材の分別しやすさを設計段階から考慮しなければなりません。
たとえば、複合素材(異種材料の貼り合わせ)を減らして単一素材化を進めたり、解体が容易な締結方法を採用したりすることが求められます。
また、再生材を25%使用するという目標を達成するためには、品質や強度を維持しながら再生材を使いこなす設計ノウハウの蓄積も急務です。
設計部門は、リサイクル部門や素材メーカーと連携し、循環性を前提としたモノづくりへと転換していく必要があります。
再生材の安定的な調達ルートを確保
再生材の使用義務化に対応するためには、高品質な再生プラスチックを安定的に調達できるルートを確保することが死活問題となります。
特に、廃車由来のプラスチック(Post-Consumer Recycled material)は、回収や選別の難易度が高く、供給量が限られているのが現状です。
義務化が始まれば、世界中の自動車メーカーによる再生材の争奪戦が起きることが予想されます。
企業は、リサイクル業者とのパートナーシップを強化したり、自社グループ内で資源を回収するスキームを構築したりと、長期的な視点での材料調達戦略を立案し、実行に移す必要があります。
サプライチェーン全体で情報を共有
車両や部品に含まれる化学物質や素材の情報を、サプライチェーン全体で正確に伝達する仕組み作りも欠かせません。
デジタルパスポートなどの導入により、部品メーカーから完成車メーカー、そしてリサイクル業者へと、製品データを受け渡していくことが求められます。
サプライヤーは、自社製品の含有物質データを迅速かつ正確に開示できる体制を整える必要がありますし、完成車メーカーはそれらの情報を統合管理するシステムを構築しなければなりません。
業界標準のデータ交換フォーマット(IMDSなど)の活用や、新たなトレーサビリティシステムの導入検討が進むでしょう。
参考:IMDS Information Pages
| 対応地域 | 具体的なアクション例 |
| 設計・開発 | 解体容易設計の導入 単一素材化 再生材適用技術の開発 |
| 調達・購買 | 再生材サプライヤーの開拓 長期契約による量確保 品質基準の策定 |
| 法規・管理 | デジタルパスポート対応 含有化学物質の把握 EPRコストの試算 |
車両のライフサイクル管理が必須に
これからの自動車ビジネスでは、販売して終わりではなく、廃棄されるまでの全ライフサイクルを管理する視点が不可欠になります。
メーカーは、販売した車がいつ、どこで廃車になり、どのようにリサイクルされたかを把握する責任を負うことになります。
これに対応するため、使用済み車両の回収ネットワークを整備したり、回収された部品をリマン(再製造)部品として再流通させたりする新しいビジネスモデルの構築も求められるでしょう。
静脈物流(リバースロジスティクス)をいかに効率化し、コストを抑えながら資源を回収できるかが、企業の競争力を左右することになります。
日本の自動車関連企業への影響は?
ELV規則の改正は欧州の法律ですが、グローバルに展開する日本企業にとっても無関係ではありません。
ここでは、日本企業が直面する具体的な影響とリスクについて解説します。
欧州向け輸出車両の要件が変更
欧州へ完成車を輸出している日本の自動車メーカーにとって、ELV規則への適合は輸出の必須条件です。
改正規則が施行されれば、再生材使用率やリサイクル設計などの要件を満たしていない車両は、型式認証を取得できず、欧州市場で販売できなくなる恐れがあります。
これは欧州でのビジネス機会を失うことを意味するため、日本国内で生産する車両であっても、欧州向け仕様についてはELV規則に準拠した設計と製造を行わなければなりません。
また、欧州現地で生産している場合も当然、現地の厳しい規制に対応する必要があります。
部品や素材メーカーも対応が必須
影響を受けるのは完成車メーカーだけではありません。
完成車メーカーが規制に対応するためには、部品や素材を供給するサプライヤーの協力が不可欠だからです。
サプライヤーは、納入する部品について、有害物質を含んでいないことの証明や、再生材を含有していることの証明を求められるようになります。
また、完成車メーカーから「この部品には再生材を〇〇%使ってほしい」といった要求が強まることも確実です。
これに対応できないサプライヤーは、取引先から選ばれなくなるリスクがあるため、素材メーカーや部品メーカーも主体的に規制対応を進める必要があります。
| 企業タイプ | 主な影響 |
| 完成車メーカー | 欧州販売車の設計変更 型式認証取得への対応 EPRコスト負担 |
| 部品メーカー | 再生材使用部品の開発要求 詳細なデータ開示の要求 |
| 素材メーカー | 高品質な再生材の供給能力確保 リサイクル技術の開発競争 |
未対応はビジネス機会の損失に繋がる
ELV規則への対応が遅れることは、単なる法令違反のリスクに留まらず、ビジネス競争力の低下に直結します。
欧州市場では、環境配慮型製品へのニーズが高まっており、サステナビリティへの取り組みが企業ブランドの価値を左右します。
逆に言えば、いち早くELV規則に対応し、高品質な循環型製品を提供できる体制を整えれば、それは大きな競争優位性になります。
規制を単なる「コスト要因」として捉えるのではなく、サーキュラーエコノミーという新しい市場における「ビジネスチャンス」として捉え直し、積極的な投資を行うことが日本企業の生き残る道と言えるでしょう。
今後のスケジュールはどうなっている?
最後に、この改正規則がいつから適用されるのか、今後のスケジュールを確認しておきましょう。
企業が準備を進めるうえでは、規則そのものの適用開始時期だけでなく、再生材含有率やデジタル循環パスポート、解体・回収に関する義務が段階的に導入される点を把握しておくことが重要です。
規則の採択と官報での公開
自動車ELV規則案は、2025年12月12日に欧州議会と欧州理事会の交渉担当者が暫定合意に達しました。
これは、欧州委員会案をベースに、欧州議会・欧州理事会・欧州委員会による三者協議を経て政治的な合意に至った段階です。
欧州理事会の発表でも、暫定合意は今後、欧州議会および理事会による正式な承認を経て採択される必要があるとされています(※1)。
また、2026年2月25日には、暫定合意を反映した統合条文案が欧州議会の委員会資料として公表されました。
これにより、再生プラスチック含有率の導入時期や、ELV由来材を含める要件など、実務上重要な内容がより具体的に確認できるようになっています(※2)。
今後は、欧州議会および理事会での正式承認を経て採択され、EU官報に掲載された後、規則として発効します。
欧州理事会は、規則は発効から2年後に適用開始されると説明しています。
したがって、仮に2026年中に発効した場合、多くの主要規定は2028年頃から適用される可能性があります。
ただし、正確な発効日および適用開始日は、最終的にはEU官報に掲載される正式条文を確認する必要があります(※3)。
| フェーズ | 時期の目安 | 内容 |
| 暫定合意 | 2025年12月12日 | 欧州議会・理事会の交渉担当者が三者協議を経て暫定合意 |
| 条文案の公表 | 2026年2月25日 | 暫定合意を反映した統合条文案が公表 |
| 正式採択・発効 | 2026年以降 | 欧州議会・理事会での正式承認後、EU官報掲載により発効 |
| 主要規定の適用開始 | 発効から2年後 | 多くの規定が適用開始される見込み |
| 再生プラスチック15% | 発効から72カ月後 | 新たに型式認証される車両タイプに適用 |
| 再生プラスチック25% | 発効から120カ月後 | 新たに型式認証される車両タイプに適用 |
| ELV等由来材の要件 | 上記の目標の一部として適用 | 各目標値の20%以上をELVまたは使用段階で取り外された部品・部材由来材で達成 |
参考:
※1:欧州委員会「Circular economy: Council and Parliament strike deal on rules for vehicle circularity and management of end-of-life vehicles」
※2:欧州委員会「REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on circularity requirements for vehicle design and on management of end-of-life vehicles, amending Regulations (EU) 2018/858 and 2019/1020 and repealing Directives 2000/53/EC and
2005/64/EC 」
※3:欧州委員会「Circular economy: Council and Parliament strike deal on rules for vehicle circularity and management of end-of-life vehicles」
施行後の段階的な義務化を確認
特に注意が必要なのが、再生プラスチックの使用義務化のスケジュールです。
暫定合意では、新たに型式認証される車両タイプに含まれるプラスチックについて、規則発効から6年後に15%、10年後に25%の再生プラスチック含有率を求める内容となっています。
欧州議会の発表でも、15%目標は規則発効から6年以内、25%目標は10年以内に適用されると説明されています。
2026年2月25日に公表された統合条文案のArticle 6では、より具体的に、発効から72か月後に15%、120か月後に25%という形で規定されています。
対象となるのは、ポストコンシューマー由来のプラスチック廃棄物から再生されたプラスチックです。
さらに重要なのは、単に再生プラスチックを使用すればよいわけではない点です。
条文案では、各目標値の少なくとも20%について、使用済み自動車、または使用段階で取り外された部品・部材に由来するプラスチックを含める必要があるとされています。
これは、いわゆるクローズドループ型の再生材利用を促す要件であり、自動車業界にとっては再生材の「量」だけでなく、「由来」や「トレーサビリティ」を証明する体制が重要になります。
一見すると、6年後・10年後というスケジュールはまだ先の話のように見えるかもしれません。
しかし、自動車の開発サイクルは数年単位であり、材料選定、部品設計、サプライヤーとの契約、品質評価、型式認証への反映には長いリードタイムが必要です。
そのため、次期モデルやその次のモデルの設計段階では、すでにこの要件を織り込んでおく必要があります。
特に日本企業にとっては、欧州市場のOEMに部材・部品を供給する場合、再生材の含有率だけでなく、ポストコンシューマー材であること、ELV由来材に該当すること、第三国でリサイクルされた材料がEU要件を満たすことなどを説明・証明できる体制が求められる可能性があります。
したがって、今後は再生材調達、材料証明、マスバランス管理、第三者検証の活用を含めたサプライチェーン対応が重要になります。
日本国内でも資源循環政策は強化されている
日本国内でも資源循環政策は強化されています。
2026年4月1日に施行された改正資源有効利用促進法では、第一弾として再生プラスチックの利用義務を課す製品に自動車、家電4品目、容器包装が位置づけられ、製造事業者等に対して再生材利用計画の策定や定期報告を求める方向性が示されています(※1)。
また、再資源化事業等高度化法では、製造業が求める質・量の再生材を安定的に供給することを目的に、再資源化事業の高度化や認定制度の整備が進められています。
EU ELV規則案とは制度設計や義務水準は異なるものの、再生材の利用拡大、品質確保、トレーサビリティ、環境配慮設計を重視する方向性は共通しています。
日本企業にとっては、欧州規制対応と国内の資源循環政策を切り離さず、サプライチェーン全体で再生材の調達・証明体制を整備していくことが重要です(※2)。
参考:
※1:経産省
改正資源有効利用促進法等の施行について
※2:環境省
資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業等高度化法) | 環境省
自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン
監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート



