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CBAM(炭素国境調整措置)とは?|対象品目や日本企業への影響を解説

EUへの輸出に影響するCBAM(炭素国境調整措置)の基本的な仕組みや対象品目、導入スケジュールを分かりやすく解説します。2026年に本格適用が開始されたいま、日本企業が取り組むべき実務対応や、世界の最新動向について確認し、自社の脱炭素戦略に役立てましょう。

※本コラムは、2026年5月25日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。

EUへの輸出や環境対応を任され、CBAMの仕組みや自社への影響が分からずお困りの担当者に向けて解説します。
この記事では、CBAMの基本的な目的や対象品目、2026年からのスケジュール、日本企業に必要な準備を分かりやすく紹介します。
読み終える頃には、自社がいつまでに何をすべきかが明確に理解できます。

CBAM(炭素国境調整措置)とは

CBAMとは、EU域外から輸入される製品に対して、製造時に排出された二酸化炭素の量に応じた炭素価格を課す新しい制度のことです。
まずは制度の全体像を把握するために、CBAMの主要な要素を以下の表に整理しました。

項目 内容
制度の正式名称 炭素国境調整措置(Carbon Border Adjustment Mechanism)
制度の導入主体 欧州連合(EU)
導入の主な目的 カーボンリーケージの防止および国際的な公平な競争条件の確保
対象となる温室効果ガス 主に二酸化炭素(一部の対象製品では亜酸化窒素やパーフルオロカーボンも含まれる)

続いて、具体的な導入の背景や既存の制度との関係について詳しく見ていきましょう。

参考:欧州委員会 CBAM公式ポータルサイト Carbon Border Adjustment Mechanism - Taxation and Customs Union
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」

CBAMの目的とカーボンリーケージの防止

CBAMの大きな目的は、地球規模での温室効果ガス削減を促進しつつ、環境規制が緩い国へ生産拠点が移転してしまう「カーボンリーケージ」を防ぐことにあります。
カーボンリーケージが起きてしまうと、EU域内での排出量が減っても世界全体での排出量は変わらず、気候変動対策の実効性が薄れてしまうからです。
たとえば、EU域内の製造業者は、厳格な環境規制に従い、高いコストを負担しながら製品を作っています。
一方で、環境規制が緩い第三国から安価な製品が輸入されてしまうと、価格競争においてEU企業が不当に不利な状況に立たされます。
このような不公平を是正し、域外からの輸入品にも同等の炭素コストを求めるための仕組みと言えます。
したがって、CBAMは公平な国際貿易の環境を維持しながら、世界全体の脱炭素化を推し進めるための重要な政策として位置づけられています。

EU排出量取引制度(EU ETS)との関連性

CBAMを深く理解するためには、EU域内で既に運用されている「EU排出量取引制度(EU ETS)」との関連性を知っておくことが役立ちます。
EU ETSは、企業に対して温室効果ガス排出量の上限を定め、超過した企業が排出枠を市場で購入しなければならない制度となっています。
これまでは、域内産業の国際競争力を守るために、一定の排出枠が無償で割り当てられてきました。
しかし、この無償割当は気候変動対策の観点から見直しが進められており、段階的に廃止されることが決定しています。
無償割当が減る分だけ、域内企業の負担は大きくなることが予想されます。
その負担増による競争力低下を防ぐ目的でCBAMが導入され、輸入品に対しても同等の炭素コストが課されるという構造になっています。
つまり、これら二つの制度は車の両輪のように連動しており、EU市場でビジネスを行うすべての企業に新しいコスト感覚を求めていると考えられます。

参考:世界をリードするEUのカーボン・プライシング(1)EU ETS | 新たなステージに入った世界のカーボンプライシング - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

CBAMの対象となる品目と適用範囲

CBAMはすべての輸入品に一律に適用されるわけではなく、特定の条件を満たす製品群から段階的に導入が進められています。
自社が扱う製品が制度の対象に含まれているかどうかを、正確に把握することが実務対応の第一歩と言えます。
現在対象として指定されている分野と今後の見通しについて、以下の表で確認しておきましょう。

項目 適用範囲に関する具体的な内容
現在の対象分野 鉄鋼
アルミニウム
セメント
肥料
水素
電力の6分野
対象となる主な国・地域 EU域外のすべての国(独自の炭素価格制度を持つ一部の国は調整対象となる場合がある)
将来的な対象拡大の可能性 鉄鋼・アルミニウムを素材とする自動車や産業機械などの複合金属製品(180品目)
免除措置の有無 年間のCBAM対象品の輸入量が50トン未満の小規模輸入業者を対象とした免除措置が、2025年10月に正式採択・施行済み

参考:Commission strengthens the Carbon Border Adjustment Mechanism

これらの対象品目について、さらに詳しい特徴や将来の動向を解説していきます。

現在適用されている6つの分野

CBAMの対象として現在指定されているのは、製造時に多くの温室効果ガスを排出する特定の6分野です。
理由として、これらの産業はエネルギーを大量に消費するためサプライチェーン全体に与える影響が大きく、早急な対策が求められている背景があります。
具体的には、鉄鉱石から作られる鉄鋼製品全般や、精錬プロセスで大量の電力を消費するアルミニウム製品などが該当します。
さらに、セメントや肥料、水素、国境を越えて取り引きされる電力も対象として指定されています。
特に鉄鋼分野については、素材そのものだけでなくネジやボルトといった中間製品も含まれる点に注意が必要です。
日本の製造業においても、これらの素材や部品をEUへ輸出している場合は直接的な影響を受けることになります。

今後予想される対象品目の拡大

現在の対象品目は限定的ですが、今後はさらに多くの分野へ適用範囲が拡大される見込みです。
EUは気候変動対策を加速させるため、他の素材や製品も対象に含める検討をすでに開始しています。
欧州委員会は2025年12月、鉄鋼・アルミニウムを素材とする産業用部品や家庭用電化製品などの川下製品(約180品目)を2028年から対象とする案を正式提案しました。
一方、プラスチック・有機化学品については、生産プロセスの複雑さや制度の一貫性の観点から、今回の拡大提案では見送りとなっています。
そのため、現時点では対象外の製品を扱っている企業であっても、将来的な規制強化に備えておくことが大切です。
自社製品が将来的に対象となる可能性を見据え、今のうちから排出量の可視化を進めることが競争力の維持につながるでしょう。

CBAMの導入スケジュールとフェーズごとの義務

CBAMは企業への急激な負担を避けるため、いくつかのフェーズに分けて段階的に導入される仕組みになっています。
各フェーズで企業に求められる義務や負担の内容が大きく異なるため、スケジュールを正確に把握しておくことが重要です。
制度の全体的なタイムラインと、それぞれの期間における主な要件を以下の表にまとめました。

フェーズと期間 制度における位置づけと企業に求められる主な義務
移行期間
(2023年10月〜2025年12月)
本格適用に向けた準備期間であり、四半期ごとの排出量報告義務のみが課されていた。
本格適用
(2026年1月以降)
金銭的負担が発生する期間であり、排出量に応じたCBAM証書の購入と年次報告が義務化されている。
EU ETS無償割当の段階的廃止 2026年から2034年にかけて実施され、これに連動してCBAMの負担割合が増加していく。

すでに本格適用のフェーズに入った現在、具体的にどのような対応が必要になっているのか、詳細について確認していきましょう。

移行期間(2023年〜2025年)の完了と実務基盤の構築

2023年10月から2025年末までの約2年間は、本格適用に向けた準備フェーズである「移行期間」として運用されました。
この期間は金銭的な負担を伴わず、四半期ごとの排出量報告のみが義務付けられており、企業に算定ルールへの習熟を促すことが目的でした。
2026年を迎えた現在、この移行期間中に構築したデータ収集体制や報告プロセスは、実際の支払いを伴う本運用の不可欠な基盤となっています。
当時の準備状況が、現在のコスト管理の精度に大きく影響しています。

本格適用(2026年以降)の証書購入義務

2026年1月から、金銭的負担を伴う「本格適用」のフェーズへと移行しました。
2025年末までの移行期間でのデータ収集を経て、実際の排出量に基づいた炭素価格の徴収が正式にスタートしています。
本格適用後は、単に排出量を報告するだけでなく、その量に応じた「CBAM証書」を輸入業者が購入し、納付することが義務付けられています。
証書の価格はEU ETSの取引価格に連動するため、市場の動向によって変動する点に注意が必要です。
日本の輸出企業は、現地の輸入業者から排出量削減の要請や、証書コストの負担に関する交渉を受けるケースが増えていくと考えられます。
したがって、本格適用が開始された現在、製品の低炭素化に向けた技術開発やコスト削減策を迅速に進めていくことが求められます。

日本企業に与える影響と必要な実務対応

EUに直接製品を輸出している企業だけでなく、サプライチェーンの一部を担う日本企業にもCBAMの波及効果が及ぶと予想されます。
輸入業者から排出量データの提示を求められた際に迅速に対応できるよう、社内の体制を整えておくことが強く求められています。
日本企業が直面する主な影響と、それに対する具体的なアクションプランを以下の表に整理しました。

日本企業への主な影響 求められる具体的な実務対応
輸入業者からのデータ提出要請 自社製品に関する正確な排出量データを算出し、期日までに取引先へ提供する体制を整える
サプライチェーン全体の透明性確保 自社の直接排出だけでなく、購入した電力や原材料由来の間接排出量も把握する
製品価格へのコスト転嫁の懸念 証書購入費用の増加を見据え、省エネ投資や再生可能エネルギーの導入による低炭素化を進める
報告不備による取引停止のリスク 算定ミスや遅延を防ぐため、専門のITツールを導入しデータ管理を自動化・効率化する

これらの対応をどのように進めていくべきか、具体的なプロセスについて詳しく解説します。

サプライチェーン全体での排出量把握

CBAMの導入により、日本企業はサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を正確に把握することが強く求められています。
報告が求められる「体化排出量(Embedded Emissions )」とは、製品が完成するまでに発生したCO₂等を、その製品に割り当てた排出量のことで、自社の工場での直接排出だけでなく、製造に使用した電力などの間接排出も含まれます。
素材の調達から加工、そして最終的な組み立てに至るまでのあらゆる工程で、どれだけの二酸化炭素が排出されたかを追跡しなければなりません。
取引先である輸入業者からは、詳細かつ正確な排出量データの提示を強く求められるようになります。
もしデータを提供できない場合、輸入業者はペナルティを恐れて取り引きを見直す可能性があります。
そのため、サプライヤーと緊密に連携し、透明性の高いデータ収集体制を構築することが競争力の維持において重要なポイントとなります。

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算定体制の構築とデータ管理の安定化

正確なデータを継続的に提供するためには、社内における排出量の算定体制とデータ管理の仕組みづくりが重要です。
手作業によるデータ収集では限界があり、計算ミスや報告の遅れが生じるリスクが高まります。
具体的には、環境部門や製造部門を横断した専門チームを発足させることが有効と考えられます。
また、リアルタイムで排出量を可視化し、CBAMの報告要件に対応した専用のITツールやシステムの導入も検討すべきでしょう。
算出されたデータが正しいことを証明するために、第三者機関による検証(第三者保証)を受けることも推奨されます。
EUの基準に準拠したデータ管理体制を早期に整えることで、取引先からの信頼を獲得し、ビジネスの継続性を高めることができます。

CBAMに関する世界の動向とよくある質問

CBAMの導入はEUにとどまらず、国際的な気候変動対策の新たな潮流として世界各国に波及し始めています。
他国の政策動向や、実務担当者が抱きやすい疑問点について事前に知っておくことで、予期せぬリスクを回避できるでしょう。
世界的な動きと制度に対する主な懸念点を、以下の表にまとめました。

項目 具体的な動向や懸念されるリスク
イギリスにおける導入予定 2027年1月から独自のCBAMを導入することが政府より正式に発表されている
アメリカなどの他国の状況 連邦議会において類似の法案が提出されており、国境炭素税の議論が活発化している
報告遅延に伴うペナルティ 移行期間中であっても、報告を怠った場合は罰金が科されるリスクが存在する
既存の貿易ルールとの整合性 世界貿易機関(WTO)のルールとの整合性について、一部の国から懸念の声が上がっている

こうした世界情勢や罰則のリスクについて、さらに深く理解するためのポイントを解説していきます。

イギリスやその他の国におけるCBAMの状況

CBAMの動きはEUだけにとどまらず、世界各国へと急速に広がりを見せています。
気候変動対策というグローバルな課題に対応するため、他国も同様の国境炭素税の導入を検討しています。
特に注目すべきは、イギリスが2027年1月からの独自CBAM導入を正式に発表している点です。
アメリカにおいても、連邦議会で独自の炭素国境調整措置に関する法案が過去に複数提出されており、今後の動向が注目されています。
このように、現在はEUへの輸出を行っていない企業であっても、将来的にイギリスやアメリカへ事業展開する際には同様の規制を受ける可能性があります。
世界的な脱炭素シフトの潮流を理解し、グローバル市場全体を見据えた長期的な環境対応戦略を練ることが重要と言えます。

報告の遅れや不備に伴うペナルティのリスク

CBAMのルールに従わず、報告を怠ったり不正確なデータを提出したりした場合、厳しいペナルティが科されるリスクがあります。
制度の実効性を担保するため、EUは輸入業者に対して重い罰則規定を設けています。
CBAM証書を納付しなかった場合は、EU ETSのペナルティに準じた過怠金(基準額は1トンあたり100ユーロ、インフレ調整により変動)が課される可能性があります。
日本企業が直接罰金を支払うわけではありませんが、輸入業者に損害を与えれば、損害賠償請求や契約解除に発展する恐れがあります。
制度の要件を正しく理解し、決められた期日までに確実なデータを提供することが、ビジネスリスクを回避するための防御策となります。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • CBAMはEUが導入した炭素国境調整措置であり、公平な競争とカーボンリーケージ防止が目的である。
  • 2026年1月より本格適用が開始され、排出量に応じたCBAM証書の購入義務がスタートしている。
  •  現在の対象は鉄鋼やアルミニウムなど6分野ですが、今後は鉄鋼・アルミニウムを素材とする自動車や産業機械などの複合金属製品(180品目)拡大する見込みである。
  • 日本企業は自社の直接排出だけでなく、サプライチェーン全体の排出量算定体制を構築することが急務となっている。
  • イギリスなどの他国も同様の制度導入を進めており、グローバルな視点での環境対応戦略が求められている。

これからの国際ビジネスにおいて、環境対応のスピードと正確性は企業の競争力に大きく影響する要素となりますので、最新動向を注視しながら着実に準備を進めていきましょう。

監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート

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