ISO 14067とは?|製品カーボンフットプリント算定の基本とメリットを解説!
掲載日:2026.05.18
ISO 14067は、製品のライフサイクル全体のGHG排出量を算定するための国際規格です。
企業が取り組むべき理由やISO 14064との違い、具体的な算定手順をわかりやすく解説します。
脱炭素経営を推進し、市場での競争力を高めたい担当者は必見の内容です。
取引先から「製品ごとのGHG排出量を提示してほしい」と求められたり、欧州向けの輸出で環境データの開示が必要になったりして、対応に頭を抱えていませんか?
脱炭素社会への移行が加速する中、企業は単に組織全体の排出量を把握するだけでなく、製品ひとつひとつの環境負荷を可視化することが求められています。
そこで重要になるのが、製品のカーボンフットプリント(CFP)算定の国際基準である「ISO 14067」です。
この記事では、ISO 14067の基本概要、他の規格との違い、そして企業が取り組むメリットと手順を解説します。
読み終える頃には、社内でのプロジェクト推進や取引先への対応に向けた具体的なアクションが明確になります。
ISO 14067とはどのような規格か?
ISO 14067は、一言で言えば「製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)の量を計算するための国際規格」です。
正式名称は「温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針」といいます。
企業が自社製品のGHG排出量を客観的な数値として示したい場合、この規格に則って計算することができます。
製品単位のGHG排出量を算定するための国際規格である
ISO 14067が対象とするのは「製品(Product)」のカーボンフットプリント、通称CFPです。
これは、原材料の調達から生産、流通、使用、そして使用後の処理(廃棄など)に至るまでの全工程で排出される温室効果ガスをCO2量に換算して合算したものを指します。
これまで多くの企業が取り組んできたのは、工場やオフィス全体から出る排出量の把握でした。
しかし、ISO 14067では「このネジ1本」「このスマートフォン1台」といった具体的な製品単位に焦点を絞ります。
製品ごとの排出量が見える化されることで、顧客は環境負荷の低い製品を選んで購入できるようになり、メーカー側はどの工程を改善すれば排出量を削減できるかが明確になります。
参考:カーボンフットプリント全般 | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
ライフサイクルアセスメントが基盤になっている
ISO 14067の計算方法は、ゼロから作られた独自のものではありません。
環境影響評価の手法として既に確立されている「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の規格であるISO 14040およびISO 14044をベースにしています。
LCAは本来、酸性雨や資源枯渇など多岐にわたる環境影響を評価するものですが、ISO 14067はその中でも特に「気候変動(地球温暖化)」への影響に特化した規格です。
つまり、LCAの考え方を用いて、温室効果ガスだけを抽出して計算するルールブックと言えます。
LCAの基礎知識がある方であれば、ISO 14067の理解は比較的スムーズに進むはずです。
ISO 14064との違いは何か?
環境担当者がもっとも混乱しやすいのが、似たような名前の規格や用語との違いです。
「うちはすでにISO 14064をやっているから大丈夫」と思っていないでしょうか?
実は、これらは目的と対象が大きく異なります。
以下の表に、ISO 14064との違いを整理しました。
| 項目 | ISO 14067 | ISO 14064 |
| 主な対象 | 個別の「製品・サービス」 | 企業や工場などの「組織」 |
| 目的 | 製品単位のCFP算定・表示 | 組織全体のGHG排出量算定 |
| 計算の視点 | ライフサイクル(原材料~廃棄) | 事業活動(Scope1, 2, 3) |
| 活用シーン | 製品差別化 | CSR報告書 |
対象が「組織」か「製品」かで異なる
最大の違いは「何を測るか」という点です。
ISO 14064は「組織(Organization)」を対象としており、その企業が1年間でどれだけのGHGを出したかを管理するための規格です。
一方、ISO 14067は「製品(Product)」を対象としており、その製品が一生涯(ゆりかごから墓場まで)でどれだけGHGを出すかを管理します。
たとえば、自動車メーカーの場合で考えてみます。
工場の電気代やガソリン代など、会社全体の活動を集計するのがISO 14064です。
対して、特定の車種1台が製造され、走行し、廃車になるまでの排出量を計算するのがISO 14067です。
これらは相互補完的な関係にありますが、計算のアプローチは全く別物です。
算定範囲と目的の違いを理解する
算定範囲(バウンダリ)の考え方も異なります。
ISO 14064では、自社の直接排出(Scope 1)や電力使用による間接排出(Scope 2)を中心とし、必要に応じてサプライチェーン排出(Scope 3)を加えます。
一方でISO 14067は、最初から製品のライフサイクル全体を見る必要があります。
原材料の採掘場所から工場までの輸送や顧客が製品を使用する際の電力消費、最終的にゴミとして燃やされる際の排出まで、自社の手を離れた部分も含めてライフサイクルとして計算します。
そのため、部材重量や輸送距離といったデータ収集がより重要となります。
なぜ、ISO 14067に取り組む必要があるのか?
手間とコストをかけてまで、なぜ製品ごとのGHG算定が必要なのでしょうか?
単なる環境貢献活動としてではなく、ビジネスの存続と成長に関わる戦略的な理由が存在します。
サプライチェーン選定で優位に立つため
現在、Appleやトヨタ自動車などのグローバル企業は、自社のサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しています。
これに伴い、部品や材料を納入するサプライヤーに対しても、製品ごとの正確なCFPデータの提出を求めるケースが急増しています。
ISO 14067に基づいた信頼性の高いデータを提供できる企業は、発注元からの評価が高まり、サプライヤーとして選定され続ける可能性が高まります。
逆に、データを出せない、あるいは根拠が曖昧なデータしか出せない場合、取引から除外されるリスクがあります。
ISO 14067への対応は、BtoBビジネスにおける「参加資格」になる可能性も考えられます。
海外の環境規制へスムーズに対応するため
EUでは「デジタル製品パスポート(DPP)」や「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」といった規制が導入・検討されており、製品の環境情報の開示が義務付けられる方向へ進んでいます。
これらの規制では、製品カーボンフットプリントの算定が求められます。
ISO 14067に準拠して計算体制を整えておくことで、急な規制強化や輸出時のトラブルを回避し、スムーズに海外展開を継続できます。
これは、リスクマネジメントの観点からも非常に重要な投資です。
消費者への環境訴求力を高めるため
BtoC製品においても、消費者の環境意識は年々高まっています。
カーボンフットプリントの表示がついた商品をスーパーやコンビニで見かける機会も増えてきました。
ISO 14067に基づいて算定された数値は、第三者検証を受けて製品に表示することにより、環境配慮型商品を好む層に対して強力なアピールとなり、競合他社製品との明確な差別化要因になります。
「なんとなくエコ」ではなく「数値に基づいたエコ」を提示できることが、ブランドの信頼性を向上させます。
具体的な算定の流れはどうなっているか?
では、実際にISO 14067に基づいて計算を進めるにはどうすればよいのでしょうか?
大きく分けて3つのステップで進行します。
この流れはLCAの手法に準じています。
目的と適用範囲を明確に定義する
最初のステップは「何のために」「どの製品を」「どこまでの範囲で」計算するかを決めることです。
これを「目的及び調査範囲の設定」と呼びます。
たとえば、社内改善用なのか、顧客への開示用なのかによって求められる精度が異なります。
また、範囲(システム境界)については、「原材料調達から出荷まで(Cradle to Gate)」とするか、「廃棄まで含めるか(Cradle to Grave)」を明確にします。
BtoBの中間製品であれば出荷までとすることが多いですが、最終製品であれば廃棄まで含めるのが一般的です。
ここで機能単位(例:材料1kgあたり、電球1個あたり等)もしっかり定義します。
ライフサイクルインベントリ分析を行う
次に行うのが、最も工数がかかるデータの収集と計算です。
これを「ライフサイクルインベントリ(LCI)分析」と呼びます。
定義した範囲内のすべての工程について、投入される資源・エネルギー(インプット)と、排出される物質(アウトプット)を洗い出します。
具体的には、原材料の使用量、製造ラインの電力消費量、輸送トラックの燃料、廃棄物の量などのデータを集めます。
集めた活動量データに、それぞれの排出原単位(係数)を掛け合わせることで、各工程の排出量を算出します。
この段階でのデータの網羅性と正確性が、最終結果の信頼性を左右します。
ライフサイクル影響評価を実施する
最後に、計算されたデータが環境にどのような影響を与えるかを評価します。
これを「ライフサイクル影響評価(LCIA)」と呼びます。
ISO 14067においては、主に「気候変動」への影響(GWP: 地球温暖化係数)を用いて評価します。
各温室効果ガス(メタンやフロンなど)をCO2換算量(CO2e)に統合し、製品1単位あたりのカーボンフットプリントとして合計値を算出します。
結果が出たら、どの工程がホットスポット(排出の多い箇所)なのかを分析し、削減策の検討やレポート作成へとつなげていきます。
算定にあたっての注意点は?
ISO 14067への取り組みはメリットが大きい反面、実務担当者が直面しやすい壁もいくつか存在します。
あらかじめ準備しておくべきポイントをお伝えします。
一次データの収集に工数がかかる
もっとも苦労するのは「一次データ」の収集です。
一次データとは、自社やサプライヤーの実測値に基づくデータのことを指します。
データベース上の平均値(二次データ)を使えば計算自体は楽ですが、ISO 14067では可能な限り一次データを使用することが推奨されています。
特にサプライヤーからのデータ収集は一筋縄ではいきません。
サプライヤー側が排出量を把握していないケースも多いため、協力依頼や説明会の開催、場合によっては算定支援を行う必要が出てきます。
社内の関係部署や取引先と連携し、余裕を持ったスケジュールでデータ収集計画を立てることが成功の鍵です。
PCR(製品カテゴリールール)の確認が必要
製品によっては、業界団体などが定めた「PCR(Product Category Rules:製品カテゴリールール)」が存在する場合があります。
PCRは、その製品群特有の計算ルール(たとえば、リサイクルの扱い方や使用段階のシナリオなど)を定めたものです。
ISO 14067はあくまで汎用的な規格であるため、より詳細なルールとしてPCRが存在する場合は、それに従う必要があります。
算定を始める前に、自社製品に該当するPCRが存在するかどうかを必ず調査してください。
PCRに準拠することで、他社製品との比較可能性が担保され、データの信頼性がさらに高まります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
• ISO 14067は製品単位のライフサイクル全体におけるGHG排出量(CFP)を算定する国際規格です。
• 企業全体の排出を見るISO 14064とは異なり、製品ごとのGHG排出量の可視化に特化しています。
• サプライチェーンでの選定基準や、欧州規則への対応として、取得の重要性が急速に高まっています。
• 正確な算定には、目的の定義から始まり、質の高い一次データの収集が不可欠です。
ISO 14067への対応は、単なるコストではなく、これからの脱炭素市場を勝ち抜くための強力な武器になります。
まずは対象とする主力製品を決め、算定範囲を定義するところから第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
ISO14067に準拠したカーボンフットプリントの算定実践研修
ISO14067に準拠したカーボンフットプリントの算定に必要な要素やプロセスを理解することができます。
また、欧州規制で求められる第三者検証へ向けたCFP算定報告書の作成に必要な知識を得ることができ、規制対応実務への取組みを高められる研修です。
監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート



