Column

Expert Columns on Sustainability

GHG排出量の算定方法とは?|初心者でもスムーズに算出する手順を解説!

企業活動から排出される温室効果ガス(GHG)の排出量を算定することは、脱炭素経営の第一歩として重要ですが、Scopeの分類や計算式など複雑な点も多くあります。
この記事では、算定の基本から具体的な4つのステップ、効率化のコツまで分かりやすく解説します。

現在、多くの企業が気候変動対策への対応を迫られています。
その中でも「GHG排出量計算」は、自社の立ち位置を把握し、具体的な削減目標を立てるための不可欠なプロセスです。
しかし、いざ計算を始めようとしても、どこから手をつければ良いのか、どのデータを集めるべきか迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、実務経験に基づき、GHG排出量計算の基礎から具体的な算出ステップまでを詳しく丁寧に解説します。
読み終える頃には、自社で計算を開始するための具体的なイメージが明確になっているはずです。

GHG排出量の算定が必要な理由は?

企業がGHG排出量を算定することは、単なる環境活動の枠を超え、現代のビジネスにおいて必須の戦略となっています。
世界的にカーボンニュートラルの実現が目指される中で、排出量の可視化はすべてのスタート地点となります。

脱炭素経営の基盤構築

自社の排出量を正確に把握することは、効果的な削減計画を策定するための基盤になります。
現状の数値が分からなければ、どの部門や工程に課題があるかを特定できません。
排出量を算定して現状を「見える化」することで、初めて具体的で実効性のある削減目標を掲げることが可能になります。
これは、コスト削減やエネルギー効率の向上にも直結する重要なプロセスです。

 

企業の信頼性向上

投資家や取引先からの評価を維持・向上させるためにも、排出量の開示は欠かせません。
近年では、ESG投資の拡大に伴い、非財務情報の開示が強く求められています。
特にサプライチェーン全体での排出量開示を求める動きが強まっており、計算を行っていないことがビジネス上のリスクになる可能性もあります。
正確なデータを公表することは、透明性の高い経営姿勢を示すことになり、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。

GHG排出量算定の基本的な仕組みは?

算定を始める前に、まずはGHG排出量がどのような考え方で算出されるのか、その全体像を理解しておく必要があります。
複雑に見える計算も、基本となる式と分類を理解すれば整理しやすくなります。

基本式は活動量と係数の積

GHG排出量の計算は、非常にシンプルな数式がベースとなっています。
基本的には「活動量」に「排出係数」を掛け合わせることで算出します。
活動量とは、電気の使用量や燃料の消費量など、排出の原因となる活動の規模を示す数値です。
排出係数は、その活動1単位あたりにどの程度のGHGが排出されるかを示す数値です。

項目 内容の例
活動量 ガソリンの使用量(L)、電力の使用量(kWh)、廃棄物の量(kg)
排出係数 ガソリン1Lあたりの排出量、電力1kWhあたりの排出量
計算結果 総GHG排出量(t-CO2e)

この基本式を、事業活動のあらゆる項目に当てはめて合計していく作業が、算定の実務となります。

Scope1は直接排出

Scope1(スコープ1)は、企業自らによる温室効果ガスの直接排出を指します。
これには、燃料の燃焼、工業プロセスにおける化学反応、フロンガス等の漏洩が含まれます。
たとえば、工場のボイラーで天然ガスを使用したり、社用車でガソリンを消費したり、セメント製造時の化学反応によるCO2排出、冷凍・空調設備からの冷媒の漏洩などがこれに該当します。
自社でコントロール可能な範囲であるため、データ収集は比較的容易であり、削減の取り組みも直接的に反映されやすい項目です。

Scope2はエネルギー起源

Scope2(スコープ2)は、他社から供給された電気、熱、蒸気を使用することによって間接的に排出されるガスを指します。
自社で燃料を燃やしているわけではありませんが、エネルギーを使用する側として責任を負うべき範囲とされています。
オフィスビルでの照明やエアコンの使用、工場のラインを動かすための電力などが代表的です。
電力会社が公表している係数を用いて計算を行うため、契約する電力プランの変更が数値に大きく影響します。

Scope3はサプライチェーン

Scope3(スコープ3)は、自社の活動に関連する他社の排出のうち、Scope1とScope2以外のすべてを指します。
これには、原材料の調達から製品の輸送、販売した製品の使用、さらには廃棄に至るまでの広範な活動が含まれます。
Scope3は15のカテゴリに分類されており、サプライチェーン全体を網羅するため、最も計算が複雑で範囲が広いのが特徴です。

分類 排出の概要 対象の例
Scope1 自社での直接排出 都市ガスの燃焼、社用車のガソリン使用
Scope2 他社供給エネルギーの消費 電力会社から購入した電気の使用
Scope3 サプライチェーン全体 原材料の仕入れ、製品の配送、従業員の通勤

 

GHG排出量算定の具体的な手順は?

算定の全体像を把握した後は、いよいよ実務のステップに進みます。
場当たり的に算定を始めるとデータの抜け漏れが発生しやすいため、以下の4つの手順を意識して進めることが大切です。

手順1: 算定範囲の決定

まずは、自社のどの範囲までを算定対象にするかを明確に定義します。
対象となる拠点やグループ会社、および算定に含める期間を確定させることが最初のステップです。
すべての項目を一度に完璧に算定しようとすると挫折しやすいため、まずはScope1と2に絞り、徐々にScope3の重要なカテゴリへと広げていくアプローチをお勧めします。

手順2: 活動データの収集

次に、算定範囲内の各活動に関する実績データを集めます。
電気代の請求書、燃料の購入伝票、廃棄物のマニフェスト、出張旅費の精算記録などが主な情報源となります。
これらのデータは各部署に分散していることが多いため、社内協力体制の構築が非常に重要です。
データの単位がバラバラな場合は、あらかじめ算定しやすい単位に統一しておくと後の作業がスムーズになります。

手順3: 排出係数の設定

収集した活動データに対応する排出係数を特定します。
係数は、環境省が公表している「排出係数一覧」や、サプライヤーから提供される個別データを使用します。
最新の係数を使用することが正確な算出の条件となるため、算定を行う年度に合わせた数値を選定してください。
一度設定した係数は、翌年以降も一貫して使用することで、経年変化を正しく評価できるようになります。

参考:環境省_算定方法・排出係数一覧 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ウェブサイト

GHG排出量の算定を効率化するコツは?

GHG排出量の算定は、対象範囲が広がるほどデータ収集や管理の負荷が急増します。
実務を継続可能なものにするためには、効率化のための手段を検討することも一つの戦略です。

算定ツールの導入

手作業での計算に限界を感じる場合は、GHG算定専用のクラウドツールの導入が効果的です。
ツールを活用すれば、データの自動連携や係数の自動更新が可能になり、人為的な計算ミスを大幅に削減できます。
また、多くのツールはダッシュボード機能を備えており、算出した結果をグラフで見える化したり、報告書の形式で出力したりすることも容易です。
初期投資はかかりますが、長期的には工数削減のメリットが上回るケースが多いです。

専門家の活用

算定の妥当性に不安がある場合や、Scope3の高度な算定が必要な場合は、専門のコンサルタントや、検証機関が提供しているトレーニング、GAP分析サービスなどを利用する方法もあります。
プロの視点から算定範囲の妥当性やデータの精度をチェックしてもらうことで、対外的な信頼性を担保できます。
特に、初めての算定でルール作りから始めなければならないフェーズでは、外部の知見を借りることで、スムーズに社内運用を立ち上げることができます。

規制の内容は多岐にわたるため、何から手をつければよいか迷うかもしれません。
しかし、闇雲に動くのではなく、ステップを踏んで着実に準備を進めることが重要です。
ここでは、推奨される4つのアクションを紹介します。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • GHG排出量の算定は、脱炭素経営の基盤であり、企業の社会的信頼を向上させるために不可欠なプロセスです。
  • 計算は「活動量×排出係数」を基本とし、自社の直接排出(Scope1)、他社供給エネルギー(Scope2)、サプライチェーン(Scope3)の3つの範囲で行います。
  • 算定範囲の決定からデータの収集、係数の設定、算出という4つの手順を正しく踏むことが、正確な結果を得るための鍵となります。


まずは自社で把握しやすい電気や燃料の使用量から算定を始め、現状を数値化することから一歩を踏み出してみてください。
その積み重ねが、持続可能な企業の未来を作る大きな力となります。

監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート

資料ダウンロード

企業のサステナビリティ対応に役立つ資料を
無料でダウンロードいただけます。

お問い合わせ

貴社の課題に応じた最適なサステナビリティ対応を
SGSがご提案します。