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EUDRとは?|対象品目や企業に求められる義務・対応ステップを徹底解説

EUDR(EU森林破壊防止規則)とは何かをわかりやすく解説します。
対象となる7品目、企業に課されるデューデリジェンスの義務、違反時のペナルティ、日本企業が直面する課題と具体的な対応ステップまで、実務担当者が知るべき情報を網羅しています。

※本コラムは、2026年9月20日時点の情報をもとに作成しており、今後変更される可能性があります。

近年、世界的に環境保護への意識が高まる中で、欧州連合は森林破壊を食い止めるための強力な法規制を導入しました。
それがEUDRです。

EUDRとは、特定の農林産品やその派生製品を欧州連合の市場で販売したり、欧州連合から輸出したりする企業に対して、その製品が森林破壊に加担していないことを証明する厳格な義務を課す法律です。
対象となる品目は、牛、ココア、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7品目であり、これらを原材料とする製品を扱う多くの日本企業にとっても対岸の火事ではありません。
サプライチェーンのグローバル化が進んだ現代において、自社の製品が間接的に環境破壊を引き起こしていないかを証明することは、企業の社会的責任として強く求められています。

本記事では、EUDRとは何かという基礎的な知識から、対象となる品目、企業に求められるデューデリジェンスの義務、違反時のペナルティ、そして日本企業が取るべき具体的な対応ステップまでを網羅的に解説します。
サプライチェーンの透明性確保が急務となる中で、EUDRへの適切な対応は企業の持続可能性を左右する重要な経営課題となります。
法務、調達、サステナビリティ推進の担当者が直面する疑問を解消し、実務における具体的なアクションへと繋げるための羅針盤として、本記事の情報を活用してください。

EUDR(EU森林破壊防止規則)の概要と制定の背景

EUDRとは、欧州連合が地球規模の森林破壊および森林劣化を抑制する目的で制定した画期的な規則です。
正式名称は「森林破壊および森林劣化に関連する特定のコモディティおよび製品のEU市場での利用およびEUからの輸出に関する規則」であり、対象となる製品が森林破壊を引き起こしていないこと、そして生産国の関連法規に従って合法的に生産されていることを保証することを企業に求めています。
この規則は、単なる環境保護の枠組みを超え、国際貿易のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

EUDRが制定された目的と背景

EUDRが制定された背景には、EU域内の消費や経済活動が、世界各地の森林破壊や森林劣化の一因となっていることへの強い危機感があります。 国連食糧農業機関の報告によると、1990年から2020年の間に世界で約4億2000万ヘクタールの森林が失われました。
これは欧州連合の総面積を上回る規模です。
森林破壊の主な原因は、農地拡大のための伐採であり、特に大豆、パーム油、牛肉などの生産が大きな要因となっています。
森林が失われることは、二酸化炭素の固定および吸収機能が減少することを意味し、気候変動をさらに加速させる可能性があります。
また、熱帯雨林の減少は、多くの動植物の生息地の喪失をもたらし、生物多様性の低下にもつながります。

欧州連合は、世界有数の消費市場として、自らの消費行動が世界の森林破壊を助長しているという事実を重く受け止めました。
そのため、市場に流入する製品から森林破壊のリスクを排除し、世界の生物多様性の保全と気候変動対策に貢献することを目的として、EUDRを制定しました。
この規則は、欧州グリーンディール政策の一環として位置づけられており、持続可能なサプライチェーンの構築を強力に推進するものです。
​​​​​​​パリ協定における温室効果ガス削減目標の達成に向けても、森林の保護は不可欠な要素として国際社会全体で共有されています。

EUTR(EU木材規則)との主な違い

EUDRは、以前から存在していたEUTRを大幅に発展させた内容となっています。
EUTRは主に違法伐採された木材および木材製品の市場への流入を防ぐことを目的としていました。
しかし、EUDRでは、木材に加え、牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆の計7つのコモディティと、それらを原料とする一定の関連製品が規制の対象とされています。
これにより、食品業界や自動車産業など、これまで木材規制とは無縁であった多くの業界が新たに規制の対象となりました。
対象範囲の拡大は、森林破壊の根本的な原因である農業用地の拡大に直接メスを入れることを意味しています。

また、EUTRが「違法伐採」のみを対象としていたのに対し、EUDRは合法的な伐採であっても、2020年12月31日以降に行われた「森林の破壊および劣化」に起因する製品を規制の対象としています。
つまり、生産国の法令上は合法であっても、森林破壊や森林劣化を伴って生産された対象コモディティや関連製品は、EUDRの要件を満たさず、EU市場への上市やEUからの輸出が認められない可能性があります。 

さらに、EUDRでは製品の生産地を特定するための厳格な地理位置情報の提出が義務付けられており、トレーサビリティの要求水準が格段に高くなっています。
企業は、単に書類上の合法性を確認するだけでなく、科学的なデータに基づいて環境への影響を証明しなければなりません。

施行スケジュールと適用開始時期

EUDRは2023年6月29日に発効しました。
当初の規則では、大企業および中堅企業に対する適用開始日は2024年12月30日、中小企業に対する適用開始日は2025年6月30日と定められていました。
しかし、欧州委員会は2024年10月に、世界中のパートナー国や産業界からの懸念の声を受け、適用開始時期を1年間延期する提案を行いました。
この延期案の背景には、生産国におけるデータ収集体制の未整備や、複雑なサプライチェーンを遡及することの技術的・経済的困難さが指摘されたことがあります。
特に、開発途上国の小規模農家が市場から排除されるリスクが強く懸念されました。

EUDRは、大企業および中規模企業については2026年12月30日から、零細・小規模企業については2027年6月30日から適用されます。
なお、EU木材規則(EUTR)の対象となっていた零細・小規模事業者については、2026年12月30日から適用されます。
適用開始まで一定の猶予期間がありますが、企業がサプライチェーン全体を遡って必要な情報を収集し、トレーサビリティやデューデリジェンスの体制を構築するためには、多くの時間と労力を要する可能性があります。
特に、生産地の地理的位置情報の取得、サプライヤーからの情報収集、森林破壊・森林劣化リスクの評価方法の整備、関連法令への適合性確認、社内システムの構築などは、短期間で完了するとは限りません。
そのため、対象となる企業には、適用開始までの期間を有効に活用し、早期に自社のサプライチェーンや必要な情報を確認しながら、段階的に準備を進めることが重要です。

比較項目 EUDR(EU森林破壊防止規則) EUTR(EU木材規則)
対象品目 木材、牛、ココア、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆 木材および木材製品のみ
規制の基準 森林破壊フリー(2020年末以降)かつ生産国の法律で合法 生産国の法律で合法であることのみ
トレーサビリティ 生産地の正確な地理位置情報(ポリゴンデータ等)が必須 サプライチェーンの一般的な情報収集が中心

EUDRの対象となる7つの産品と派生製品

EUDRとは、特定の農林産品とそれらを加工して作られる派生製品に対して厳格な規制を課すものです。
対象となる品目は、世界の森林破壊に大きな影響を与えていると欧州委員会が特定したものが選ばれています。
これらの品目は私たちの日常生活に深く浸透しており、規制の影響は広範な産業に及びます。

対象となる主要な7品目

EUDRの対象となる主要な産品は、牛、ココア、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7品目です。
これらの産品は、熱帯地域を中心とする森林地帯を農地や牧草地に転換して生産されることが多く、森林破壊の主要なドライバーとなっています。
たとえば、南米アマゾン地域では、大豆畑や肉牛のための牧草地の拡大が熱帯雨林の減少に直結しています。
東南アジアでは、パーム油生産を目的としたアブラヤシ農園の急速な拡大が、森林減少や地域植生の変化を通じて、豪雨災害の被害を深刻化させる一因となっている可能性が指摘されています。

EUDRは、これらの産品を直接取り扱う企業だけでなく、これらを原材料として使用する幅広い産業に影響を与えます。
食品業界、飲料業界、自動車産業、家具製造業、化粧品業界など、多岐にわたる分野の企業が自社のサプライチェーンを見直す必要に迫られています。
たとえば、大豆は主に家畜の飼料として消費されるため、食肉や乳製品のサプライチェーンにも間接的な影響を及ぼします。
企業は、自社の事業活動がこれらの7品目にどのように依存しているかを正確に把握することがコンプライアンスの第一歩となります。

規制対象に含まれる派生製品の範囲

EUDRの規制対象は、一次産品である7品目にとどまりません。
それらを加工して製造された派生製品も規制の対象となります。
派生製品の対象範囲は非常に広く、EUDRではEUの関税分類で用いられるCNコード(Combined Nomenclature)に基づいて詳細に定められています。
そのため、自社製品がEUDRの対象となるかどうかを判断する際には、該当するCNコードを正確に確認することが非常に重要です。
複雑な加工工程を経た製品であっても、原材料に指定品目が含まれていれば対象となる可能性があります。

具体的な関連製品の例として、牛では牛肉などが対象となります。
カカオではカカオ豆、ココアパウダー、チョコレートなど、コーヒーでは生豆や焙煎コーヒーなどが対象です。
また、2026年7月に欧州委員会が採択した対象製品リストの見直しでは、インスタントコーヒー(可溶性コーヒー)を新たに対象に追加することが盛り込まれています。
アブラヤシでは、パーム油のほか、一部のパーム油由来製品が対象となります。
ゴムでは天然ゴムやタイヤなど、大豆では大豆、大豆油、大豆粕などが対象です。
木材については、丸太や製材品だけでなく、パルプ、紙・板紙、段ボール、木製家具など、幅広い関連製品が対象となります。
一方、書籍、新聞、その他の印刷物など、第49類(Chapter 49)の製品は対象外となっています。
ただし、同じ原材料を使用した製品であっても、すべてが自動的にEUDRの対象となるわけではありません。
対象製品はEUDR Annex IにCNコードで具体的に定められているため、自社製品のCNコードを確認し、対象範囲に含まれるかを正確に判断することが重要です。

EUDRによって企業に課される主な義務

EUDRとは、対象製品をEU市場に上市する、またはEUから輸出する事業者に対して、デューデリジェンスの実施を義務付ける規則です。
企業は、必要な情報を収集し、森林破壊・森林劣化への関与や生産国の関連法令への適合性についてリスク評価を行い、必要に応じてリスク低減措置を講じます。
その結果、対象製品がEUDRの要件に適合し、不適合となるリスクがない、または無視できる程度であることを確認したうえで、デューディリジェンス宣言書(Due Diligence Statement, DDS)を提出する必要があります。
デューデリジェンスは単なる形式的な書類作成ではなく、原材料の生産地、地理的位置情報、森林破壊・森林劣化の状況、生産国の関連法令への適合性などについて、必要な情報を収集・評価する実質的なプロセスです。

情報収集と地理位置情報の取得

デューデリジェンスの第一歩は、サプライチェーンに関する情報を収集することです。
企業は、製品の種類、数量、生産国、サプライヤー情報などに加え、原材料が生産された土地の地理的位置情報を確認する必要があります。
地理的位置情報は、原則として緯度・経度の座標で示します。
また、牛以外の対象コモディティについて、4ヘクタールを超える生産地では、土地の境界を示すポリゴンデータが必要です。
このため、EUDR対応では、原材料がどこで生産されたのかをサプライチェーンの上流まで遡って把握できるトレーサビリティの確保が重要になります。

リスク評価の実施方法

情報収集を終えた企業は、次にリスク評価を行います。
リスク評価では、原材料の生産地や地理的位置情報、森林の状況などを確認し、2020年12月31日以降に森林破壊や森林劣化が生じていないかを評価します。
必要に応じて、衛星画像などの情報を活用することもできます。
併せて、生産国の関連法令に適合しているかも確認します。
対象となる法令には、土地利用権、環境保護、労働者の権利、人権、先住民族の権利などが含まれます。
また、欧州委員会は各国を「低リスク」「標準リスク」「高リスク」の3段階に分類しています。
企業は、この国別リスク分類も参考にしながら、自社のサプライチェーンに適合しないリスクがないか、またはそのリスクが無視できる程度であるかを判断します。
リスクが無視できる程度ではない場合には、追加資料の収集や現地確認などのリスク低減措置を実施する必要があります。

リスク緩和措置の実行

リスク評価の結果、対象製品がEUDRに適合しないリスクが「ない、または無視できる程度」と判断できない場合、企業はリスク低減措置を講じる必要があります。
具体的な措置としては、サプライヤーへの追加情報や資料の要求、独立した調査や監査の実施などがあります。
また、小規模生産者を含むサプライヤーに対して、能力向上や必要な投資を支援することも認められています。
こうした措置を講じても、リスクを「ない、または無視できる程度」まで低減できない場合、その製品をEU市場に上市したり、EUから輸出したりすることはできません。
リスク低減に関する判断や実施内容は記録し、少なくとも5年間保管する必要があります。
規制当局から求められた場合には、これらの記録を提示できるようにしておくことが求められます。

デューデリジェンス宣言書の提出

デューデリジェンスを実施し、対象製品がEUDRに適合しないリスクが「ない、または無視できる程度」であることを確認した企業は、EUのInformation Systemを通じて「デューデリジェンス・ステートメント(DDS)」を提出します。
DDSには、製品情報、生産国、生産地の地理的位置情報などが含まれます。
DDSを提出することで、企業は必要なデューデリジェンスを実施し、対象製品がEUDRの要件を満たしていることを確認した旨を表明します。
提出されたDDSには固有の参照番号が付与されます。
この参照番号は、必要に応じてサプライチェーン上の次の事業者へ引き継がれ、輸出入の際には税関手続きでも使用されます。
EUDRへの適合状況は、EU加盟国の所管当局による検査の対象となります。
そのため、DDSの基礎となる情報を正確に収集・確認し、適切に管理することが重要です。

ステップ 概要 具体的な作業内容
1. 情報収集 サプライチェーンの可視化とデータ取得 生産地の地理的位置情報、サプライヤー情報、合法性に関する情報等を収集
2. リスク評価 森林破壊リスクと非合法リスクの分析 国別リスク分類、森林状況、法令適合性等を確認
3. リスク緩和 特定されたリスクの低減措置 追加情報の収集、追加調査、第三者機関による監査、サプライヤーへの支援等 

EUDRの対象となる企業の分類と定義

EUDRでは、サプライチェーン上の立場に応じて、企業に求められる義務が異なります。
そのため、自社が「オペレーター」または「トレーダー」のどちらに該当するのかを正しく把握し、それぞれの役割に応じた対応を行うことが重要です。
この区分を誤ると、必要な手続きの漏れや、不要な業務負担につながる可能性があります。

オペレーターの定義と義務

EUDRにおける「オペレーター」とは、商業活動の一環として、対象製品をEU市場に初めて上市する、またはEUから輸出する自然人または法人を指します。
たとえば、EU域外から大豆やパーム油などの対象製品を輸入し、EU市場に初めて上市する企業は、オペレーターに該当する可能性があります。
オペレーターは、対象製品を上市または輸出する前に、必要な情報を収集し、リスク評価を行い、必要に応じてリスク低減措置を講じるなど、EUDRで定められたデューデリジェンスを実施する必要があります。
その結果、対象製品がEUDRに適合しないリスクが「ない、または無視できる程度」であることを確認したうえで、Due Diligence Statement(DDS)を提出します。

トレーダーの定義と義務

「トレーダー」とは、すでにEU市場に上市された対象製品を、商業活動の一環として市場で提供する自然人または法人を指します。
たとえば、EU市場にすでに上市されたコーヒー豆を仕入れ、EU域内の小売店などに販売する卸売業者がトレーダーに該当する場合があります。
トレーダーは、原則として自らデューデリジェンスを実施してDDSを提出する必要はありません。
一方で、仕入先や販売先など、サプライチェーンのトレーサビリティに必要な情報を収集・保管することが求められます。
また、対象製品がEUDRに適合していない可能性を示す情報を得た場合には、所管当局へ通知するなど、EUDRで定められた対応を行う必要があります。

中小企業(SME)に対する特例措置

EUDRでは、零細・小規模企業の負担を軽減するため、一部の義務について簡素化措置が設けられています。
特に、低リスク国において自ら対象コモディティを生産し、上市または輸出する一定の「零細・小規模一次オペレーター」については、通常のデューデリジェンス・ステートメント(DDS)に代えて、原則として一回限りの簡易申告を行う制度が設けられています。
また、一定の零細・小規模企業については、EUDRの適用開始日が2027年6月30日とされています。
ただし、中小企業であっても、大企業のサプライチェーンに含まれている場合には、取引先から生産地や原材料などの情報提供を求められる可能性があります。
そのため、企業規模にかかわらず、自社がEUDR上でどのような立場にあるのかを確認し、取引先から求められる情報も含めて、早めに準備を進めることが重要です。

EUDR違反時に科される厳しいペナルティ

EUDRでは、規則の実効性を確保するため、違反した事業者に対する罰則が定められています。
罰則には、罰金だけでなく、対象製品や違反によって得た収益の没収、EU域内での対象製品の上市・輸出の一時的な禁止、公共調達や公的資金からの一時的な除外などが含まれます。
そのため、対象となる企業はEUDR違反による事業上のリスクを十分に理解し、適切なコンプライアンス体制を整備することが重要です。

罰金規定と制裁の概要

EUDRに違反した場合、EU加盟国の管轄当局等は、違反企業に罰金等の制裁を科すことができます。
法人に対する罰金については、違反によって得た経済的利益を実質的に取り除き、十分な抑止効果を持たせることが求められています。
また、その上限額は、EU域内における年間総売上高の少なくとも4%となるよう設定されます。
さらに、罰金以外にも、違反によって得た製品や収益の没収、対象製品のEU市場への上市・輸出の一時的な禁止、公共調達や公的資金からの一時的な除外などの制裁が科される可能性があります。
このため、EUDR違反は企業に大きな財務的・事業上の影響を与える可能性があり、適切なコンプライアンス体制の整備が重要です。

製品の没収と市場アクセス制限

EUDRでは、罰金以外にもさまざまな制裁が定められています。
たとえば、規則に適合していない対象製品の没収や、その製品の取引によって得た収益の没収が行われる可能性があります。
また、重大な違反や違反を繰り返した場合には、対象製品のEU市場への上市・販売や輸出が一時的に禁止されることがあります。
さらに、公共調達や公的資金へのアクセスから、最大12か月間除外される可能性もあります。
法人に対する違反の最終判決については、欧州委員会のウェブサイトで企業名、判決日、違反内容、科された罰則などが公表されます。
そのため、EUDR違反は、罰金や製品の没収といった直接的な損失だけでなく、企業の信用や取引関係、ブランド価値に影響し、株主や投資家からの評価にも悪影響を及ぼす可能性があります。

ペナルティの種類 詳細内容 企業への主な影響
罰金 法人の場合、EU域内年間総売上高の4%以上を上限額として設定 重大な財務的損失、利益の圧迫
製品の没収 違反製品の上市・輸出の停止および没収 在庫の損失、納品遅延による取引先からの信用失墜
市場アクセス制限 公共調達・公的資金からの一時的除外(最大12か月) 事業機会の喪失、ブランドイメージの深刻な悪化

日本企業が直面するEUDRへの対応課題

EUDRは、EU域内の企業だけでなく、対象製品をEU向けに供給する日本企業にも大きな影響を与える規則です。
日本企業には、生産地の地理的位置情報の取得や、サプライチェーンを遡った情報収集など、これまで以上に高いトレーサビリティが求められる可能性があります。
そのため、自社製品がEUDRの対象となるか、また取引先からどのような情報提供を求められるかを早期に確認し、準備を進めることが重要です。

サプライチェーンの遡及とデータ収集の難しさ

大きな課題の一つは、複雑なサプライチェーンを遡り、原材料の生産地に関する正確な情報を収集することです。
また、生産地によってはデジタル化や通信環境が十分でない場合もあり、座標やポリゴンデータの収集が課題となる可能性があります。
EUDR対応には、取引先やサプライヤーと連携しながら、サプライチェーン全体で必要な情報を収集・共有できる仕組みを整備していくことが重要です。

地理位置情報システムの導入コスト

EUDR対応では、生産地の地理的位置情報やサプライヤー情報、リスク評価の記録など、多くのデータを適切に収集・管理する必要があります。
取引量やサプライヤー数が多い企業では、こうした情報を効率的に管理するため、専用のITシステムやトレーサビリティツールの導入が有効です。
また、必要に応じて衛星画像などの地理空間情報をリスク評価に活用することもできます。
一方で、システムの導入や既存の基幹システムとの連携には、費用や人員が必要となる場合があります。
そのため、IT部門だけでなく、調達、法務、サステナビリティなどの関係部門が連携し、自社の取引規模やリスクに合った管理方法を検討することが重要です。

企業がEUDRに対応するための具体的なステップ

EUDRとは、対応に多大な時間とリソースを要する複雑な規制です。企業は適用開始日に間に合わせるために、計画的かつ段階的に準備を進める必要があります。
ここでは、企業が直ちに取り掛かるべき具体的なステップを解説します。

対象製品の特定とサプライチェーンの可視化

EUDR対応の最初のステップは、自社が製造、輸入、輸出または販売する製品の中に、EUDRの対象となる7つのコモディティや関連製品が含まれているかを確認することです。
まず、自社製品の原材料やCNコードを確認し、EUDR Annex Iの対象製品に該当するかを整理します。
対象製品が確認できたら、次にサプライチェーンを把握します。どの国や地域で原材料が生産され、どのようなサプライヤーや加工業者を経て自社に届いているのかを確認し、不足している情報を明らかにします。
特に、生産地の地理的位置情報や原材料の由来を把握できていない場合には、サプライヤーと連携して必要な情報を収集する仕組みを整えることが重要です。
まずは、自社がEUDR上でどのような立場にあり、現在どこまで情報を把握できているのかを確認することが、対応の出発点となります。

デューデリジェンス体制の構築と運用

サプライチェーンの現状を把握した後は、必要な情報を継続的に収集し、リスク評価やリスク低減を行うためのデューデリジェンス体制を整備します。
社内では、調達、法務、サステナビリティ、情報システムなどの関係部門が連携し、役割と責任を明確にすることが重要です。
また、取引量やサプライヤー数に応じて、地理的位置情報やサプライヤーデータを管理するためのITツールを活用することも有効です。
併せて、リスク評価やリスク低減の方法を社内手順として整理し、必要に応じて外部の専門家や第三者機関の支援を活用します。
運用開始後は、実際の案件を通じて課題を確認し、手順やシステムを継続的に見直していくことが重要です。

サプライヤーとの連携強化

EUDRへの対応は、自社だけで完結するものではなく、サプライヤーとの連携が重要です。
企業は、サプライヤーにEUDRで必要となる情報やその目的を説明し、生産地の地理的位置情報や合法性に関する資料など、必要なデータを継続的に収集できる仕組みを整える必要があります。
特に、小規模生産者からの情報収集が難しい場合には、データ収集方法の説明や研修など、サプライヤーの能力向上を支援することも有効です。
サプライヤーと継続的に協力しながら、必要な情報を正確に収集し、リスクを低減できる関係を構築することが重要です。

フェーズ 実施事項 目標時期の目安
フェーズ1: 現状把握 対象製品・CNコードの確認、サプライチェーンの把握と情報ギャップの特定  直ちに開始
フェーズ2: 体制構築 関係部門の役割分担、ITツールの選定、デューデリジェンス手順・社内マニュアルの整備 適用開始の1年前まで
フェーズ3: 運用と改善 サプライヤー情報の収集、リスク評価の実施、試行運用と課題の洗い出し 適用開始の半年前まで

 

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • EUDRは、森林破壊・森林劣化を防ぐことを目的として、7つのコモディティとその関連製品を規制するEU規則です。
  • 企業は、対象製品の生産地に関する地理的位置情報など、必要なサプライチェーン情報を収集します。
  • 収集した情報に基づいてリスク評価を行い、必要に応じてリスク低減措置を実施します。
  • 違反した企業には、法人の場合、EU域内年間総売上高の少なくとも4%を上限額として設定する罰金制度のほか、製品の没収や上市・輸出の一時的禁止などの制裁が科される可能性があります。
  • 適用開始に向けて、自社製品の対象範囲の確認、サプライチェーンの把握、情報収集体制やデューデリジェンス体制の整備を早期に進めることが重要です。

サプライチェーンの透明性を高めることは、EUDRへの対応だけでなく、安定した調達体制の構築や企業の持続可能性の向上にもつながります。
さらに、EUDRへの適切な対応は、企業の信用やESG評価にも関係するため、投資先としての信頼性を維持する観点からも重要です。 

監修:SGSジャパン株式会社 サステナビリティエキスパート

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