無線技術コラム Vol.1 76GHz帯小電力ミリ波レーダーの技術的条件見直しとは?               ~EIRP基準化による車載レーダー高度化の方向性~

NEW2026年07月28日

本コラムでは、法改正の動向や規格改正の内容について、技術的な観点から整理し、認証機関として実務に役立つ情報を分かりやすくお伝えします。

第一回では、総務省の陸上無線通信委員会報告(案)概要をもとに、76GHz帯小電力ミリ波レーダーの高度化に関する技術的条件の見直しについて概説します。

 

76GHz帯の車載ミリ波レーダーは、追従走行支援(ACC)や衝突被害軽減機能など、先進運転支援システム(ADAS)を支えるセンサの一つとして、広く利用されています。

見直しの背景

76GHz帯(76~77GHz)車載ミリ波レーダーは、1990年代以降、欧米を中心に国際的に標準化され、日本でも1999年の制度化以降、追従走行支援(ACC)や衝突被害軽減機能などを中心に利用されてきました。2015年には国際動向を踏まえ、占有周波数帯幅を500MHzから1GHzへ拡張する制度改正も行われています。

 

近年は、自動運転や高度な運転支援システムの普及を背景に、車両周辺の歩行者・自転車などを含めた対象を、より広い角度かつ遠距離で安定して検知する性能が求められています。こうした状況を踏まえ、車載レーダーの高度化に向けた技術的条件の見直しが進められています。

日本と海外の規定の違い

レーダーの検知距離は、空中線電力と空中線利得を組み合わせた等価等方輻射電力(EIRP)に大きく依存します。

 

日本の現行基準

  • 空中線電力:10mW以下
  • 空中線利得:40dBi以下
  • 空中線電力の許容偏差も個別に規定

 

日本では、空中線電力と空中線利得をそれぞれ個別に規定しているため、視野角を広げるために利得を下げた場合、EIRPも低下し、検知距離に影響が生じる可能性があります。

 

海外の規定

  • 空中線電力そのものではなく、EIRPの上限(50dBm.eirp)で規定
  • 空中線利得を下げた場合でも、空中線電力との組合せによりEIRPを維持しやすい
  • 広角化と遠距離検知の両立に向けた設計自由度が高い

 

最新の報告案では、EIRPの上限値を維持しつつ、その範囲内で空中線電力と空中線利得を組み合わせられるようにする方向で、技術的条件が整理されています。

出所:情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会報告(案)概要「76GHz帯小電力ミリ波レーダーの高度化に関する技術的条件」(2026年4月)より

これまでの検討経緯

本件については、2021年12月の陸上無線通信委員会において検討事項が整理され、その後、76GHz帯小電力ミリ波レーダー高度化作業班において、利用状況、海外基準、技術的条件などに関する審議が進められてきました。​

 

主な経緯

2021年12月:陸上無線通信委員会で技術的条件の見直しに向けた検討事項を整理

2022年2月:作業班の運営方針や検討の進め方を確認

2022年4月:海外基準や利用状況について関係者から説明、議論

2026年1月:干渉に関する検討結果および報告書骨子について議論

技術的条件案のポイント

  • 一定のEIRP以下である場合、既存の上限値である0.01Wを超えた空中線電力の設定を可能とする方向
  • EIRPの最大値は、現行レーダーとの整合を踏まえ、現行相当の50dBm以下を維持
  • 免許不要の特定小電力無線局として取り扱うため、空中線電力は1W以下であることが必要
  • 空中線電力の規定は「0.01W以下。ただし、EIRPが50dBm以下となるものについては1W以下」とする案

まとめ

  1. 車載レーダーの高度化に伴う検知性能向上のニーズのため、76GHz帯小電力ミリ波レーダーの技術的条件見直しが進められています。
  2. EIRPを基準とした制度設計により、空中線電力と空中線利得の組合せに一定の柔軟性を持たせる方向で検討されています。
  3. 報告案では、現行相当のEIRP 50dBm以下を維持しつつ、条件を満たす場合には空中線電力を従来の最大0.01Wから最大1Wまで設定できる案が示されています。
  4. これにより、広角化と遠距離検知の両立に向けた設計自由度の向上が期待されます。

 

【注記】

本コラムで取り上げた内容は、2026年4月時点の陸上無線通信委員会報告(案)概要に基づくものであり、最終的な制度改正内容を示すものではありません。

今後の審議、意見募集、制度改正手続きなどにより、技術的条件や運用上の取り扱いが変更される可能性があります。実際の認証申請や製品設計にあたっては、最新の法令、告示、審議会資料などを確認することが重要です。

SGSジャパンのサービス

76GHz帯小電力ミリ波レーダーを含むミリ波帯無線機器について、FCC、CE、電波法に対応した各種試験・認証サポートを提供しています。車載レーダーをはじめ、ミリ波帯を利用する製品の海外展開や国内認証をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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