EMC技術コラム Vol.2 EMC試験とは? ~EMIとEMSの違いを初心者向けに解説~
2026年08月25日
この記事でわかること
EMC、EMI、EMSの関係、エミッション試験とイミュニティ試験の役割、製品によって試験内容が異なる理由を、初めてEMC試験を検討する方にも分かりやすく整理します。
EMCとは
電気・電子機器は、動作するときに電磁的なエネルギーを発生します。そのエネルギーが周囲の機器へ影響を与える場合がある一方、製品自身も周囲の電磁環境から影響を受ける場合があります。
EMCはElectromagnetic Compatibilityの略で、日本語では一般に「電磁両立性」と呼ばれます。簡潔に表すと、機器が周囲へ過度な電磁妨害を与えず、想定される電磁環境の中で必要な機能を維持できる状態を意味します。IECは、周囲の機器が安全かつ信頼性をもって動作できるよう、電磁妨害を抑えることをEMCの基本的な考え方として説明しています。
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ポイント EMCは単に「ノイズを出さないこと」だけではありません。「周囲へ出す妨害を抑えること」と「外来の妨害を受けても必要な機能を維持すること」の両方が必要です。 |
EMIとEMSの違い
EMI/エミッション:製品から出る妨害を確認する
EMIはElectromagnetic Interferenceの略で、電磁妨害を指します。EMC試験では、製品から外部へ出る妨害を評価する側を「エミッション」と呼びます。
例えば、スイッチング電源、高速デジタル回路、モーターなどは動作に伴って電磁的な妨害を生じることがあります。妨害は空間へ放射される場合と、電源線や信号線などのケーブルを伝わる場合があります。エミッション試験では、これらの妨害レベルが適用規格で定められた限度値を満足しているかを確認します。
EMS/イミュニティ:外来妨害を受けたときの耐性を確認する
EMSはElectromagnetic Susceptibilityを由来とする表現で、日本では一般に電磁感受性または妨害に対する耐性の文脈で使われます。規格や試験の説明では「イミュニティ」という用語が広く使われます。
イミュニティ試験では、静電気、放射無線周波電磁界、サージ、高速トランジェント、電圧ディップなどの妨害を規定条件で製品へ与え、必要な機能や性能が維持されるかを確認します。IECのEMC関連規格は、エミッション測定方法、エミッション限度値、イミュニティ試験方法、試験レベルなどを扱っています。
電磁妨害はどのように起こるのか
電磁妨害を理解するときは、「妨害源」「結合経路」「影響を受ける機器」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。妨害源があっても、影響を受ける機器までエネルギーが伝わる経路がなければ問題は起こりません。また、同じ製品がある状況では妨害源となり、別の状況では影響を受ける側となることもあります。
結合経路には、空間を伝わる放射、電源線や信号線を伝わる伝導、近接した配線間の容量性結合や誘導性結合、共通のグランドや電源インピーダンスを介する結合などがあります。本コラムでは基礎概念にとどめ、個別の結合メカニズムは今後の技術コラムで紹介します。
EMC試験の基本的な分類
下図は基本的な整理です。実際には静電気放電、サージ、電圧ディップ、電源高調波・フリッカなど、製品と適用規格に応じて複数の試験項目があります。
製品によって必要なEMC試験が異なる理由
必要な試験は、製品の種類、使用環境、電源条件、接続するケーブル、搭載する無線機能、販売する国や地域などによって異なります。例えば、住宅環境で使う機器、工場で使う制御機器、医用電気機器、車載部品では、想定される電磁環境や求められる性能が同じではありません。
IECのEMC基本刊行物は、用語、電磁現象、電磁環境、測定・試験技術、設置や対策の指針などを扱います。また、基本規格、共通規格、製品群規格、製品規格があり、製品に適用する要求事項は個別に確認する必要があります。
| 試験計画時に確認したい情報 製品の用途、使用環境、販売地域、電源仕様、ケーブル構成、動作モード、外形寸法、必要な監視方法、候補となる規格をあらかじめ整理すると、試験条件の確認が進めやすくなります。 |
EMC試験を初めて依頼される方へ
EMC試験では、試験項目だけでなく、試験中の製品の動作状態や周辺機器、ケーブル配置、監視方法なども重要です。通常動作だけでなく、妨害の発生が大きくなり得る動作モードや、製品の主要機能を適切に確認できる方法を検討します。
SGSでは、各種規格に基づくEMC試験を実施しています。適用規格や対応可能な試験条件は製品によって異なります。製品仕様、使用環境、販売地域などの情報を基に、詳細を個別に確認します。
まとめ
- EMCは、周囲へ過度な電磁妨害を与えず、想定される電磁環境で必要な機能を維持するための考え方です。
- EMI/エミッションでは製品から出る妨害を、EMS/イミュニティでは外来妨害に対する耐性を確認します。
- EMC問題は、妨害源、結合経路、影響を受ける機器の3要素で整理できます。
- 必要な試験は、製品の種類、使用環境、販売地域、電源やケーブル構成などによって異なります。
- 試験計画の段階で製品情報と動作・監視方法を整理することが、円滑な試験実施につながります。
【注記】
本記事はEMCの一般的な考え方と試験分類を紹介するものです。適用規格、要求レベル、試験方法および判定基準は製品ごとに異なるため、詳細は個別にご確認ください。
本件に関する問合せ先:
SGSジャパン株式会社
C&P Connectivity Wireless
TEL:050-1780-7880
または本ウェブサイト上のお問い合わせフォームhttps://sgsjapan-portal.jp/inquiry.phpよりご連絡ください。
