EMC技術コラム Vol.3 3m電波暗室とは? ~放射エミッション試験の仕組み~
2026年10月02日
電子機器は、動作するときに意図しない電磁ノイズを発生することがあります。放射エミッション試験は、製品から空間へ放射される妨害波を測定し、適用される規格の限度値と比較する試験です。本記事では、測定距離が3mの試験環境を「3m電波暗室」と呼ぶ理由と、試験を安定して行うための基本的な仕組みを初心者向けに紹介します。
3m電波暗室とは
3m電波暗室は、被試験機器と受信アンテナの基準となる測定距離を3mとして、放射エミッションを評価するための試験環境です。「3m」は暗室そのものの縦・横・高さを表す数値ではありません。測定距離、基準点および配置は、適用規格と試験条件に従って設定します。
暗室は、外部から到来する電波の影響を抑えるシールド構造と、壁や天井などからの反射を抑える電波吸収体を組み合わせた環境です。図1に、3m電波暗室が放射エミッション測定で果たす役割を概念的に示します。
図1 3m電波暗室の役割
【ポイント】
3mという数値だけで試験可否は決まりません。製品寸法、ケーブル配置、動作状態、周波数範囲および適用規格を確認し、必要な試験サイトを選定します。
放射エミッション試験の基本的な流れ
被試験機器を規定の状態で動作させる
被試験機器は、通常使用を代表する動作状態で設置します。電源ケーブル、通信ケーブル、周辺機器および負荷の構成は測定結果に影響するため、適用規格に沿って準備します。
アンテナで妨害波を受信する
受信アンテナで電界を捉え、EMIレシーバなどの測定器で周波数ごとの妨害波レベルを確認します。アンテナの偏波や高さなどの条件は、適用規格や対象周波数によって異なります。
製品の向きやアンテナ条件を変える
製品には方向によって放射の強さが変わることがあります。ターンテーブルで被試験機器の向きを変え、アンテナ側の条件も調整しながら評価します。一般的な構成を図2に示します。
図2 放射エミッション測定の一般的な構成
適用規格の限度値と比較する
測定した妨害波レベルを、製品に適用される規格の限度値と比較します。限度値、検波方式、測定帯域幅および測定距離の扱いは規格によって異なります。
3m法と10m法の違い
3m法と10m法では、被試験機器と受信アンテナの基準となる測定距離が異なります。距離が異なると、必要な空間、製品やケーブルを配置できる範囲、試験サイトへ求められる条件が変わります。主な確認ポイントを図3に整理します。
図3 3m法と10m法の確認ポイント
【注意】
3m法と10m法の結果は、すべての条件で単純換算できるものではありません。適用規格に試験距離や換算方法の規定がある場合は、その要求に従います。
関連する主な規格
放射エミッション測定では、試験サイトや測定方法に関する基本規格と、対象製品ごとの要求を定める製品規格を確認します。代表例は次のとおりです。
- CISPR 16-1-4:放射妨害測定に用いるアンテナおよび試験サイトに関する基本規格
- CISPR 16-2-3:放射妨害の測定方法に関する基本規格
- CISPR 32:マルチメディア機器のエミッション要求に関する規格
- CISPR 11:工業・科学・医療用機器などの無線周波妨害特性に関する規格
- CISPR 25:車載受信機の保護を目的とした車両・部品の無線妨害特性に関する規格
適用規格は、販売地域、用途、搭載先および製品分類により異なります。試験計画の段階で確認することが重要です。
どのような製品で活用されるのか
- 情報技術機器、オーディオ・映像機器および通信機器
- 産業用、科学用および医療用の電気機器
- 家電製品、照明機器および制御機器
- 自動車に搭載する電装品や電子部品
- 無線機能を備える製品の非意図放射評価
【補足】
北山田試験所で対応できる製品寸法、重量、電源条件、周波数範囲および適用規格は、試験内容により異なります。詳細についてはお問い合わせください。
SGS北山田試験所の設備・試験環境
SGS北山田試験所ではEMC試験に対応しています。一般に、放射エミッション試験では電波暗室、アンテナマスト、ターンテーブルおよび受信設備などを使用します。北山田第一試験室(K1)の電波暗室は奥行9.0m×幅6.0m×高さ6.0mで、測定距離の3mは暗室の大きさを表すものではありません。
K1のターンテーブルは直径2.0m、積載重量600kgです。一方、暗室への搬入スロープの耐荷重は400kgで、設置と搬入では確認する条件が異なります。製品の搬入方法、給電条件、試験の可否や現行の設備仕様についてはお問い合わせください。
技術的なポイント
外来ノイズと反射の影響を抑える
放射エミッション測定では、被試験機器からの妨害波を安定して捉える必要があります。シールド構造は外部電波の侵入を抑え、電波吸収体は室内反射の影響を低減します。
配置と動作条件を再現できるようにする
測定値は、製品の向き、ケーブルの長さや引き回し、周辺機器および動作モードなどによって変化します。試験実施前に構成を整理し、試験中の状態を記録することが重要です。
初めてEMC試験を依頼するお客様へ
試験相談の際は、製品の外形寸法と重量、電源仕様、ケーブル構成、周辺機器、代表動作モード、希望する適用規格および市場を整理しておくと、必要な試験環境を確認しやすくなります。
SGSでは、各種規格に基づく試験を実施し、被試験機器の構成や試験内容を考慮しながら、効率的な試験実施をサポートします。対応範囲や設備条件には制限があるため、詳細についてはお問い合わせください。
まとめ
- 3m電波暗室の「3m」は、放射エミッション測定における基準となる測定距離を表します。
- シールド構造と電波吸収体により、外来ノイズと反射の影響を抑えた評価環境を構成します。
- ターンテーブル、アンテナマストおよび受信設備を用い、製品の向きやアンテナ条件を確認しながら測定します。
- 適用規格、製品寸法、ケーブル構成および動作条件によって必要な試験環境は異なります。
【注記】
本記事はEMC試験設備および一般的な規格運用の概要を紹介するものです。
適用規格や試験条件は製品ごとに異なるため、詳細は個別にご確認ください。
本件に関する問合せ先:
SGSジャパン株式会社
C&P Connectivity Wireless
TEL:050-1780-7880
または本ウェブサイト上のお問い合わせフォームhttps://sgsjapan-portal.jp/inquiry.phpよりご連絡ください。
