無線技術コラム Vol.3 6GHz帯無線LANの周波数拡張等に係る技術的条件の検討案とは?
2026年10月21日
本コラムでは、法改正の動向や規格改正の内容について、技術的な観点から整理し、認証機関として実務に役立つ情報を分かりやすくお伝えします。
今回は、陸上無線通信委員会が令和8年6月に示した報告書概要をもとに、6GHz帯無線LANの屋外・高出力利用を可能にするSP(Standard Power)モードについて、対象周波数、AFC(自動周波数調整)システム、既存無線システムとの共用条件、認証・試験上の留意点を整理します。
検討の背景
我が国では、5925~6425MHzにおいて、屋内・低出力で利用するLPI(Low Power Indoor)モードと、屋内外で超低出力利用が可能なVLP(Very Low Power)モードが導入されています。令和5年度には320MHz帯域幅の利用も認められ、6GHz帯無線LANの広帯域化が進みました。
一方、工場のミッションクリティカル通信、屋外スタジアム、学校・避難所などでは、屋外でより高い出力を利用できるSPモードへの期待があります。北米では既に導入されており、我が国でも既存システムを保護しながら利用可能とする技術的条件が検討されました。
検討案の中心は、SPモード端末の位置に応じて利用可能な周波数と最大許容電力を決定するAFC(Automated Frequency Coordination)システムです。固定局や電波天文設備の保護情報と端末の位置情報を組み合わせ、周波数共用を動的に管理します。
SPモードの主な技術的条件(案)
■周波数帯:5925~6425MHz(6GHz低域帯)及び6570~6870MHz(6GHz高域帯)をSPモードの対象とします。
■伝送速度:占有周波数帯幅に応じ、以下の伝送速度以上であることが求められます。
| 占有周波数帯幅 | 伝送速度 |
|---|---|
| 20MHz幅以下 | 20Mbps以上 |
| 20MHz幅を超え40MHz幅以下 | 40Mbps以上 |
| 40MHz幅を超え80MHz幅以下 | 80Mbps以上 |
| 80MHz幅を超え160MHz幅以下 | 160Mbps以上 |
| 160MHz幅を超え320MHz幅以下 | 320Mbps以上 |
■周波数の使用条件:
・周波数の使用は屋内外で認められます。ただし、SPアクセスポイント及び固定クライアントについては、固定された場所に設置しなければならない。
・別に定める機能要件を備えたAFCシステムが提供する情報に従って運用を行う。
■異種システムとの共用方策:
AFCシステム利用に係る機能の条件を満足し、技術的要件を満たすAFCシステムにより使用可能とされた周波数及びその出力制限に従って、電波を発射するものとする。
■AFCシステム利用に係る機能の条件(概要):
・AFCシステムへアクセスして機器登録を行う機能を備え、登録情報には、位置情報、アンテナ地上高情報、機器認証番号及び製造番号を含める。
・少なくとも1日に1回、自位置で使用可能な周波数リスト及び最大許容電力を取得する機能を備える。
空中線電力密度の上限
| 占有周波数帯幅 | SPアクセスポイント及び固定クライアント | SPクライアント |
|---|---|---|
| 20MHz以下 | 50mW/MHz以下 | 50mW/MHz以下 |
| 20MHzを超え40MHz以下 | 25mW/MHz以下 | 25mW/MHz以下 |
| 40MHzを超え80MHz以下 | 12.5mW/MHz以下 | 12.5mW/MHz以下 |
| 80MHzを超え160MHz以下 | 6.25mW/MHz以下 | 6.25mW/MHz以下 |
| 160MHzを超え320MHz以下 | 3.125mW/MHz以下 | 3.125mW/MHz以下 |
等価等方輻射電力密度(e.i.r.p.)の上限
| 占有周波数帯幅 | SPアクセスポイント及び固定クライアント | SPクライアント |
|---|---|---|
| 20MHz以下 | 200mW/MHz以下 | 50mW/MHz以下 |
| 20MHzを超え40MHz以下 | 100mW/MHz以下 | 25mW/MHz以下 |
| 40MHzを超え80MHz以下 | 50mW/MHz以下 | 12.5mW/MHz以下 |
| 80MHzを超え160MHz以下 | 25mW/MHz以下 | 6.25mW/MHz以下 |
| 160MHzを超え320MHz以下 | 12.5mW/MHz以下 | 3.125mW/MHz以下 |
■空中線電力:1W以下。
■等価等方輻射電力(e.i.r.p.):
・SPアクセスポイント及び固定クライアントデバイスは4W以下、SPクライアントは1W以下。
・屋外に設置されるSPアクセスポイント及び固定クライアントデバイスは、水平面に対して仰角30度を超える方向で測定されるe.i.r.p.の最大値が21dBm(125mW)を超えないこと。
■測定法:
・電波の質等、電波発射に係る特性の測定については、既存の6GHz帯無線LANシステムの一部答申で示された測定法を用いる。
・既存システムとの共用条件を満足することを担保するため、構造上、筐体にアンテナを外付けする機構を備える機器については、機器が対応する外付けアンテナのすべてを測定する。
・「仰角による出力制限」及び「AFCシステムへ接続するためのインタフェース機能」については、要件遵守を確認するための測定方法が必要。パンクチャリング機能を備えるSPモードデバイスについても、同様に測定方法が必要。
AFCシステムの役割と要件
SPモードデバイスは、位置情報、アンテナ地上高、機器認証番号及び製造番号をAFCシステムへ登録します。AFCは固定局情報及び電波天文設備の情報を参照し、干渉保護基準と伝搬モデルに基づいて、その場所で使用可能なチャネルと最大許容電力を返します。
AFCシステムに求められる主な機能
AFCシステム及びそのオペレータには、以下の機能・運用体制が求められます。
| 項目 | 主な要件 |
| 機器登録・許可 | 認証番号の有効性確認、稼働許可、LPI/SPコンポジットデバイスの判定、90日間のログ保全 |
| 周波数可用性 | 固定局情報を取得し、干渉保護基準と伝搬モデルに基づいて利用可能周波数及び最大許容電力を決定 |
| 既存局の保護 | 固定局はI/N≦-10dB、電波天文は干渉電力≦-181dBm/10MHzを基準として保護 |
| 伝搬モデル | 距離に応じて自由空間損失、WINNER II LOS、Rec. ITU-R P.452-18を適用 |
| セキュリティ・運用 | セキュア通信、不正アクセス・改ざん対策、データベース維持、干渉報告への対応体制 |
※AFCシステムのオペレータとは、SPモード無線LAN機器の利用者ではなく、既存無線システムとの周波数共用を実現するためのAFCデータベース及び周波数管理システムを運営する事業者を指します。
認証・試験実務への影響
- 従来の無線特性測定に加えて、仰角30度超の方向に対するe.i.r.p.制限を確認する測定方法が必要。
- AFC接続インタフェース、登録情報、周波数・電力制御及び定期照会が要件どおり動作することを確認する必要がある。
- パンクチャリング機能を備えるSPモードデバイスについても、共用条件の遵守を確認するための測定方法が必要。
まとめ
今回の検討案では、5925~6425MHz及び6570~6870MHzを対象に、AFCを前提としたSPモードの導入条件が示されました。屋外・高出力利用による利便性向上が期待される一方、位置情報に基づく動的な周波数・電力管理、既存局保護、上方向放射の制限、外付けアンテナを含む測定、干渉報告対応など、装置とAFCシステムの双方に新たな確認事項が生じます。
【注記】
本コラムは、令和8年6月の陸上無線通信委員会報告書概要に示された検討案を整理したものです。今後の制度化により要件や測定方法が変更・具体化される可能性があるため、製品設計、試験計画及び認証申請に際しては、公布後の省令・告示、総務省資料及び最新の技術基準を確認してください。
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