EMC技術コラム Vol.4 伝導エミッション試験とは?
2026年10月26日
電源ケーブルから出るノイズの測り方
製品が正常に動いていても、内部で発生した高周波ノイズが電源ケーブルを通じて外部へ伝わることがあります。伝導エミッション試験は、このようなノイズを規定された条件で測定する試験です。放射ノイズとの違い、測定設備の役割、試験前に確認したい事項を紹介します。
伝導エミッション試験とは
エミッションは、製品から外部へ出る電磁的な妨害を意味します。空間へ電波として伝わるものを放射ノイズ、電源線や信号線などの導体を通じて伝わるものを伝導ノイズと呼びます。本記事では、主にAC電源ポートの伝導ノイズを扱います。
図1 伝わる経路による違い。一般的な概念図です。
【ポイント】
伝導エミッションは「製品から出るノイズ」を測定します。外部からノイズを加えて耐性を確認するイミュニティ試験とは、評価する方向が異なります。
どのように測定するのか
代表的な電源ポートの測定では、被試験機器(EUT)と電源の間にLISNを接続し、LISNの測定端子から取り出した高周波ノイズをEMIレシーバで測定します。電源を供給する経路と、ノイズを測定器へ取り出す経路を分けて考えると、構成を理解しやすくなります。
図2 電源、LISN、EUTおよびEMIレシーバの接続イメージ。
測定結果の見方
電源線と基準接地との間の妨害電圧を、周波数ごとに確認します。AC電源ポートの代表的な評価では、準尖頭値(QP)や平均値(AV)など、適用規格で指定された検波方式の結果を、それぞれの限度値と比較します。予備測定のピーク値だけで、すべての最終判定を代用できるわけではありません。
配置条件が重要な理由
EUTの動作状態、周辺機器、電源ケーブルの長さや配置、接地状態が変わると、測定結果も変わることがあります。試験では、製品の使用状態を踏まえつつ、適用規格で定められた配置条件を整え、測定条件を記録します。
【注意】
図は測定原理を説明するための模式図です。接地方法、寸法、ケーブルの処理および測定器の接続は、適用規格に従って設定します。
LISNとは
LISNはLine Impedance Stabilization Networkの略で、電源線のインピーダンスを規定の条件に整えるための回路網です。電源側から入り込む高周波ノイズの影響を抑えながら、EUTからのノイズを測定器へ取り出す役割もあります。
図3 LISNの主な役割。製品に組み込むノイズ対策部品ではありません。
コモンモードとディファレンシャルモード
2本の導体を例にすると、ディファレンシャルモードは一方の導体を流れてもう一方を戻る成分です。コモンモードは、複数の導体を同じ向きに流れ、接地や浮遊容量などを介して戻る成分です。実際の電源線の測定結果には、両方の成分が含まれます。LISNを接続するだけで、常に両モードが別々の測定値として得られるわけではありません。
関連する主な規格
- CISPR 32/EN 55032:マルチメディア機器のエミッションに関係する規格です。
- FCC Part 15 Subpart B:米国向けの非意図的放射機器の要求事項です。
- CISPR 16シリーズ:妨害波の測定装置や測定方法などの基礎となる規格です。
適用規格、版、製品区分および対象ポートによって、測定範囲や限度値は異なります。試験計画の段階で確認することが重要です。
どのような製品で活用されるのか
AC電源を使用する電子機器や、ACアダプタと組み合わせて使用する機器などが検討対象になります。ただし、電源を使用する製品すべてに同じ要求事項が適用されるわけではありません。
- 情報処理機器、映像・音響機器などのマルチメディア機器
- ACアダプタを含む構成で評価する電子機器
- 製品規格に電源ポートのエミッション要求がある機器
SGSが活用する設備・試験環境
伝導エミッションの測定では、EMIレシーバ、LISN、試験用電源および基準接地面などを組み合わせます。シールドルームなど、外来ノイズの影響を管理した環境も測定を支えます。
SGSでの試験を検討する際は、製品の電源仕様、適用規格および必要な試験構成をお知らせください。設備の定格や対応範囲は試験内容によって確認が必要です。詳細についてはお問い合わせください。
技術的なポイント
- 電源条件と構成をそろえる:電源電圧、周波数、ACアダプタ、周辺機器をあらかじめ整理します。
- 動作状態を再現する:必要な機能が試験中も継続して動くよう、ソフトウェアや負荷条件を準備します。
初めてEMC試験を依頼する方へ
製品の仕様書に加え、電源・ケーブルの接続図、使用する周辺機器、代表的な動作モードおよび対象市場を整理すると、試験計画を確認しやすくなります。SGSでは、規格に基づく試験の実施にあたり、EUTの構成や試験内容を確認します。
まとめ
- 伝導エミッション試験は、ケーブルを通じて外部へ伝わるノイズを評価します。
- LISNは、電源線の測定条件を整え、ノイズを測定器へ取り出すために使用します。
- 適用規格と製品構成を確認し、動作状態や配置条件をそろえることが重要です。
【注記】
本記事はEMC試験設備および一般的な規格運用の概要を紹介するものです。適用規格や試験条件は製品ごとに異なるため、詳細は個別に確認してください。図は一般的な概念図です。
本件に関する問合せ先:
SGSジャパン株式会社
C&P Connectivity Wireless
TEL:050-1780-7880
または本ウェブサイト上のお問い合わせフォームhttps://sgsjapan-portal.jp/inquiry.phpよりご連絡ください。
